中国の大手不動産企業の副総裁が衝撃の事実を明らかにしました。首都北京では90万件にも上る空き家物件が存在するそうです。香港のように空き家に対し税金をかけるべきだと主張しています。ところが、中国では90万件どころではないというコメントも寄せられているのです。なぜここまで空き家が増えてしまったのでしょうか。
北京中心部の空き家物件は90万件以上、解決には課税が効果的?=「また課税か」と中国ネットは反発
2018年8月29日(水) 18時40分新浪経済は22日、北京市の六環路内の空き家物件は90万件以上あり、解消のためには課税するのが効果的だとする業界関係者の意見を紹介した。
記事は、中国の大手不動産会社・我愛我家の胡景暉(フー・ジンホイ)副総裁の発言を掲載。胡副総裁は「われわれは郊外に格安賃貸住宅や公共賃貸住宅を頻繁に建設しているが、北京市内の五環路や六環路内には90万件もの物件が空き家状態となっている。北京政府はなぜ香港にならって空き家税を導入しないのか? 税金をかけるだけで90万件の空き家をなくすことができる」と語ったという。
これに対し、中国のネットユーザーから「空き家をどう定義するかというのが難題だ」「(空き家は)90万件どころではないと思う」「空き家が90万件というのはどうやって統計したのかと尋ねたい」などのコメントが多く寄せられた。
また、「何かあると税金という。税金を取ることしか能がないのか」「空き家税というのは多くの国で導入している。投資者に対して一定の効果はあるが、富裕層はこんなお金を気にすることはない。政策というのは国情を考慮に入れるべきで、税収になるからとすぐに実施すべきではない」など、慎重な意見も少なくなかった。
他には「空き家にしていることが違法なのだろうか?」との声がある一方で、「税金をかけるのはいいことじゃないか。また不動産価格が上がって、家を購入する人が負担するだけなのだから」といの書き込みも見られた。
(翻訳・編集/山中)
目次
北京と東京を各種データから比較する
北京だけで90万件か…。多いのか少ないのか分からないわ。
東京の空き家は2017年の統計で82万件だそうです!あまり変わりませんね。
記事をよく見ろ。北京の「六環路内」の空き家物件と書いてあるぞ。
六環路とは何でしょう?
日本学術会議という機関で北京の渋滞を東京と比較した資料が作られていますが、その中に6環路についての説明が書かれています。2環路、3環路、4環路と環状道路が広がっていく仕組みのようですね。人口分布としては6環路の内側にはおおよそ1600万人が居住していますが、これは東京の同じ面積範囲で比較した場合の950万人よりもはるかに大きい数字となります。
環状7号とか8号線と似たような感じか。つまり東京より人口密度が大きいってことか…。やべえな。
東京の場合は周辺地域からの流入が多いはずなので、一概に比較はできませんが。6環路というのはちょうど首都圏の川崎と横浜の間あたりに位置するそうです。何か比較対象となる道路や地域があれば分かりやすいのですが。
川崎と横浜の間か…。国道16号よりは小さそうだな。北側や西側はどの辺りだろう?
5環路と6環路の間には町田や国分寺、さいたま、所沢、松戸、市川があり、6環路の外側に相模原、八王子、立川、千葉などがあるそうです。私が分かるのは相模原と所沢だけです。
16号は福生の横田基地の真横を通るから、立川より外側だな。立川と国分寺の間には特に幹線道路がない…。難しいね。
1人当たりの空き家数で計算した場合、北京より東京の方が多くなる恐れ
ボクはあまり道路に詳しくないんですけど、内部の面積で比較してみては?
北京市の面積は1.6万km2ですが、どうでしょう。
東京都の面積は2200km2程度で、関東大都市圏の面積が1万3000km2くらいかな。でも北京市の全体でなく、6環路の内側の空き家数が問題になってるんだろ?あまりその比較は意味ないと思う。
そうですね。せっかく6環路の内側の人口を比較した資料がありますので、活用しましょう。これまでの情報を整理しますと、北京の6環路の内側の人口1600万人に対して、東京の場合は同じ範囲の人口は950万人となります。北京の6環路の内側の空き家数は90万件なのに対し、東京の場合は全体で82万件となります。ちなみに東京23区の人口は921万人だそうですので、暫定的に6環路の内側=東京23区と考えることができますね。
東京23区の空き家数は、2013年で58.7万件でした!不動産屋さんの記事なので、正確だと思います!
それは一番必要なデータです。最終的に1人当たりの空き家数で計算しますと、北京が90万件 / 1600万人 = 0.0563、東京が58.7万件 / 950万人 = 0.0618となります。
東京の方が空き家が多いじゃねえか…。どうなってんだ?
だから中国のネットユーザーが「90万件どころではない」と書いてるのでは?
なるほど。東京と比較した場合に北京の方がマシだと言い張るためのギリギリのラインが90万件ということか。不動産企業の副総裁の発言だから、そこまで計算している可能性もなくはないぞ。
実態は公表値より悪く不動産バブルの崩壊の恐れも
ネットユーザーは東京との比較はしていませんでした・・・。ただ、郊外に空き家が大量に作られている可能性には言及されていました。
香港にならって空き家税を導入するというのも、日本では空き家の方が税金が安いことへの対抗なのかもしれない。中国の法制度なら簡単に更地にできるはずだからな。
わざと空き家のままにして、税金を多く取り立てるということでしょうか?
日本では空き家に更地と同じ税をかけると、更地が急増してしまうと言われてる。2015年に特別措置法が成立してるけど、それでも更地は空き家の4倍も税金がかかるんだ。だから空き家のままで維持している人が今でも多い。中国はそれらの政策の成り行きを見て考えている可能性はあるよね。
不動産バブル崩壊の可能性はあるんでしょうか?
六環路とやらの外側にどれだけ不動産が建てられてるかじゃない?郊外はもっと悲惨なのかもしれない。90万件どころじゃないという点を加味すれば、実際には100万件は優に超えていると見るのが自然だろう。
確かに!「郊外に格安賃貸住宅や公共賃貸住宅を頻繁に建設」って書いてあります。わざと都合いい数字を出すために、範囲を六環路内側に限定したんでしょうか?
記事にそう書いてあるな。主張としては中心部に空き家が沢山あるのに、なぜ郊外に次々と物件を建てるのかというものだけど、これが図らずとも不都合な事情の片鱗を明らかにすることになってしまったわけだ。
良い点に気が付きましたね。通常であれば大都市の中心部の方が不動産価値が高く人気もありますので、北京市全体で考えた場合だと空き家は想像もつかない件数に膨れ上がっている可能性はあります。こればかりは資料がなければどうしようもありませんね。同様に、東京の場合は関東大都市圏で空き家の数字を出す必要があります。
実態は公表値よりはるかに悪い可能性もあるな…。しかもそれが中国の場合は全土に広がっている。こういう表に出た統計から1つ1つ検証していくのは大事だね。