鈴置さん恒例の記事だが、今回はレーダー照射事件について鋭い分析を残している。韓国が初期の報道から内容を一変させて、日本が低空飛行してきたことによる正当防衛だったという言い訳をする方向に切り替えてきたことが分かる。そして問題は日本海における韓国軍の脅威と安全保障面での対策に繋がっていく。長文だが非常に読み応えがあるので、ぜひとも全文に目を通してもらいたい。
「現場の嫌がらせ」では済まないレーダー事件 くるりと言い訳を翻した韓国
12/27(木) 12:00配信 日経ビジネスオンライン自衛隊機へのレーダー照射事件で、韓国が説明を変える。「遭難漁船を救助中だった」との説明にも疑問符が付く。
●攻撃直前の行為
ーー韓国の駆逐艦が日本の哨戒機に対し「攻撃寸前の態勢」をとりました。
鈴置:防衛省の発表によると12月20日、海上自衛隊の哨戒機P1が日本海の日本のEEZ(経済的排他水域)を飛行中に、韓国海軍の駆逐艦、広開土大王(クァンゲト・デワン)から火器管制レーダーの照射を受けました。
弾の入った銃を他人に向けたのも同然で、平時にはあり得ない行動です。岩屋毅防衛相は12月21日「攻撃直前の行為だ。不測の事態を招きかねない。韓国は説明すべきだ」と語りました。
共同通信の「レーダー照射『攻撃直前の行為』と防衛相」(12月21日)などが報じました。
●否認に転じた韓国
ーー韓国政府は事件を否認しています。
鈴置:初めは堂々と認めたうえ「大した話ではない」と言っていました。それが日本政府に追い詰められると説明を変え「レーダーを照射したことはない」と言い出したのです。
12月22日までは韓国メディアに対し火器管制レーダーを使ったが、日本の哨戒機を狙ったものではなかったと説明していました。
ところが12月22日に防衛省が「火器管制レーダーは捜索には使わない」と指摘。さらには日本のメディアが「レーダー照射は複数回で一定時間続いた」「火器管制レーダーは哨戒機を向いていた」などと意図的なレーダー使用の可能性が高いと報じた。
そこで12月24日、国防部は「照射」自体がなかったと言い出したのです。「追跡レーダーの光学カメラで日本機を追跡したが、電波は一切出さなかった」との説明に変えたのです。
日本に逆ねじを食らわす
ーーなぜ、言い訳を180度変えたのでしょうか。
鈴置:初めは「日本の哨戒機に照準を合わせたものではなかった」と言い張れば、見逃してもらえると考えたのでしょう。しかし日本は強硬で、土曜日の12月22日にも防衛省が「韓国の嘘」と発表して追い打ちをかけるなど、追及の手を緩めなかった。
出るところに出れば、韓国は国際的な非難を浴びます。なぜなら火器管制レーダーの照準を当てることは、軍事衝突を避けるための海洋衝突回避規範(CUES=Code for Unplanned Encounters at Sea)に明確に違反するからです。
そこで国防部は「照射せず」と言ったと思われます。12月24日に「日本の哨戒機こそが我が方の駆逐艦の上を低空で飛ぶなど、危険な行為に及んだ」と言ったのも「CUES違反は日本側だ」と逆襲するつもりだったのでしょう。
外交部も助太刀に出ました。日韓の外務省は12月24日にはソウルで局長級会議を開いたのですが、韓国側は「事実関係の明確な確認なしに自分たちの立場を主張した」と日本を非難しました。ここでも逆ねじを食わせたのです。
聯合ニュースは「外交部、『レーダー騒ぎ』で日本に遺憾を表明…事実確認なしに発表」(12月24日、韓国語版)の見出しで報じました。
そこで12月25日、日本の防衛省が「火器管制レーダー特有の電波を一定時間、複数受けたことを確認した」と発表したのです。要は「証拠はある。日本が公開したら恥をかくぞ」と警告したのです。 韓国が言い出した「日本の危険な飛行」に関しても防衛省は否定しました。
●人命救助に文句を言うな
ーー韓国紙はどう報じているのですか?
鈴置:左派系紙も保守系紙も韓国政府の言い分が正しいとの前提で書いています。そのうえで「難癖をつけてきた」日本を非難したのです。
左派系紙、ハンギョレの社説「日本、“レーダー事件”外交争点化を意図…韓日外交会議時も抗議」(12月23日、日本語版)の結論は以下です。
・韓国軍が故意に狙ったものではないと説明し、実際に北朝鮮船舶を救助したのに日本側がこれを争点化するのは、最近の韓日関係のためと見られる。
・韓国最高裁(大法院)の強制徴用賠償判決に反発する日本が“レーダー事件”をカードとして活用しようとする意図が窺える。
保守系紙の朝鮮日報も同様でした。「最悪の韓日関係が見せた『レーダー騒ぎ』」(12月24日、韓国語版)のポイントを翻訳します。
・当時漂流していた北朝鮮の漁船が我が軍に救助されたことなどを見るに、海軍が日本の哨戒機を意図的に狙った可能性はまずない。
・友好国の間であれば問題になるようなことではない。というのに日本は「あり得ないこと」と抗議した。
・・・https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181227-39851935-business-int
目次
鈴置さんのコラムが今回も頭一つ抜け出てる印象
鈴置さんの記事、いつも楽しみにしてます!今回も読み応えがありますね!
とんでもない長文記事にも関わらずそれを感じさせないスムーズな論理展開、そして事実に基づいた確かで緻密な情勢分析。今回のレーダー照射事件で色々な人のコラム記事に目を通したが、鈴置さんの記事が頭一つ抜け出てる印象だね。事件の経緯をこれほどまでに分かりやすくまとめた記事は他に存在しないよ。
ホントですね・・・。ボクも最初の報道について忘れかけてました!
そうなんだよ。最初は韓国も射撃レーダーを使っていたと認めていて、北朝鮮の船を探すために回していたのが偶然日本の機体に当たってしまったとする言い訳を展開したんだ。ここが何気に重要なポイントとなってくる。
それが、レーダー照射は数分間続いたということを暴露されて、言い訳を変えてきたんですね!
この時点で相当苦しいわけだが、韓国側としては何とか乗り切れると思い込んでいたようだ。その背景として日本の方がむしろ危険な飛行を繰り返したという反撃ができると考えたからだろう。案の定映像を公開してからも、自衛隊機が150mまで迫っていたなどと本当かどうか分からない話を韓国軍関係者が展開している。
でも、日本の防衛省はそれを否定してるんですよね?
韓国側は当面この言い訳を維持するつもりのようだ。あとは韓国のウソを日本が明確な根拠をもとに看破することができるかが焦点となってるわけだが、現時点で判明していないことが2つある。何だかわかるよな?
韓国軍が照射したレーダーの周波数と、日本の自衛隊が当時飛行していた時の高さですよね!
その通り。この2つについての証拠が出ない限り、どちらがウソをついているかという客観的な判断はできない。防衛省が映像を出したので問題点はここに集約されたというわけだ。
韓国では報道に疑問を持つ人も
ところが韓国側ではこの報道の変化に疑問を持つ人が出始めた。記事の続きにそのことが書いてある。
青瓦台より日本メディアを信頼
ーー「言い訳」を180度変えたことに関し、韓国メディアはどう書いたのですか?
鈴置:無視することにしたようです。そのおかしさに触れた大手メディアの記事は見当たりません。
もちろん韓国の記者も「あれっ」と思ったでしょう。読者の書き込み欄を見ると、政府の説明を信じ「日本機を撃墜すべきだった」という反応がある半面、「政府は見苦しい言い訳はもうやめろ」といったものがあります。
例えば12月24日の国防省の「火器管制レーダーの照射は一切なかった」との発表を報じた朝鮮日報の記事「軍『日本の哨戒機を追跡すべくレーダーを運用したことはない』」(12月24日、韓国語版)の書き込みには以下があります。
・言い訳丸出しの言い訳は国の威信を貶める。左派の乗組員が戦争ゲームをしたのだ。青瓦台(大統領府)より日本のメディアの方が信用できるなんて。
・一日ごとに新しい説明を作り出す国防部の言葉通りなら結局、火器管制レーダーは北朝鮮の漁船救助作業とは関係なく、日本の哨戒機を照射したことを認めたのだ。カメラの電源を入れれば火器管制レーダーも一緒に回ることを知っていながら稼働したということは、日本の哨戒機がレーダーに照射されようと関係ないという未必の故意があったということだ。
いずれも、韓国政府が信じられなくなったが故の書き込みです。そりゃそうです。「照射した」が突然「照射しなかった」との説明に変わったのですから。
●突っぱねれば日本は引っ込む
ーーだったらなぜ、韓国紙はその変節を指摘しないのでしょうか。
鈴置:初めの段階で「韓国政府の説明が正しい」との前提で社説を書いてしまったからでしょう。もちろん政府の言い訳が180度変わったことを基に、社説を軌道修正する手はあります。
ただ、「我が海軍は北の漁船を救け、それを日本機が邪魔しようとしたのだ。火器管制レーダーを使ったとしても、正当防衛だ」と信じている人も多い。
今になって記事を修正して政府批判すれば「国家反逆新聞」の烙印を押されかねない。メディアとすれば、この問題が収束するのを待つ方がいいのです。
根っこには「突っ張っておけば日本はあきらめて引っ込む」との判断があります。これまで日本は韓国の滅茶苦茶な行動に怒って見せても、さしたる報復はしなかった。だから今度も、適当なことを言ってうっちゃっておけばいい、というわけです。
・・・
韓国の人達も疑わしいって思ってるんですね!ボクもそう思います!
みんながみんな愛国心を発揮したいわけじゃないし、経済が逼迫している重大な時期だというのにこんな話で年末を迎えたくはないわな。2019年は悲観一色になるという話もさっき出たが、特に朝鮮日報の読者なんかは早いところ経済対策をしてほしいというのが本音だろう。
それなのに、韓国メディアはどこも真実を報道できないなんて・・・。
最初に韓国軍が正しいという前提で社説などを書いてしまっただけに、今さら論調を曲げるのは愛国心が許さないという感じだろう。この点に関しては中央日報も朝鮮日報も、聯合ニュースも他のメディアも同じだと思われる。時事通信もかな。
射撃レーダーは正当防衛だ、って言ってる人もいるみたいですね!何から守ろうとしてたんでしょう?
そこも日本の自衛隊機が低空飛行していたという主張と重なる部分だね。むしろ日本から先に韓国艦艇に軍事的挑発をしてきたというシナリオの方が成立しやすいと考えたんだろう。
でも、自衛隊に高度を発表されたら意味がないのでは?
それもでっち上げだって言うつもりじゃないかな。高さは目視では確認しにくいから、確かな証拠というのは映像では出しようがない。さっきどこかのネットユーザーが言ってたような、第三者機関にデータを提出して公平に判断してもらうという方法を取るしかないと思われる。だから水掛け論で終わることを危惧している自衛隊の元司令官もいた。
韓国軍は日本海を掌握しようとしている
ネットユーザーの反応です!
・日本は手を緩めないでほしい
・隣がこんな国だなんて
・今までの日本ならすぐに引き下がると思ったんだろう
・日本側は早く証拠を突き付けてほしい
・最後まで焦らして、言い訳がどのように変わるのか聞いてもいい
・これなら最初から敵として対応できる北朝鮮の方がマシ
・もっと大きな事件として扱うべき
・これは国際社会では宣戦布告を意味する
・笑い者になってるだけだとなぜ気付かないのか
・隣国であっても反撃します、くらいは言ってほしい
・日本が言い返すことがなかったので、どうしていいのか分からないのでは
・最初に謝罪してればこうはならなかった
・韓国側の日本海進出を勢いづけるかもしれない
うむ。韓国の武力進出を警戒している書き込みが見られるのは、記事の続き部分にこれがあるからだな。
漁船救助に駆逐艦が出動したって?
趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムを舞台に、ファンド・ビルダーのペンネームで外交・安保を縦横に論じる識者もこの点に首を傾げました。
「海軍『火器管制レーダー照射』に関する疑問点」(12月24日、韓国語)です。その部分を抄訳します。
・韓国政府とメディアは「広開土大王」が北朝鮮の漁船救助活動に出動したことを既成事実化しているが、本当だろうか。北朝鮮の警備艇がエンジン故障で漂流していたのなら、重大性を考慮して駆逐艦が出動するのは理解できる。しかし小さな漁船が漂流して駆逐艦が動員されたとの説明は理解し難い。
・海洋警察がそばにいなかったというならまだ分かるのだが。あえて海軍が出なければならない状況だとしても、機動力の良い高速艇が出るのが正常である。
ファンド・ビルダー氏はもう1つ「位置」に関しても疑問を呈しました。これも要約しつつ訳します。
・各紙の報道によると、漂流した北朝鮮の漁船の位置は大和碓の北西だった。一方、日本の哨戒機はかなり離れた日本のEEZ上空を飛んでいた。「広開土大王」はその中間にいた。
・漁船とは真反対の位置にいた日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射したことになる。だとすると照射時間はどんなに長くても数秒のはずだが、なぜ数分間に至ったのか。この事件は「漁船の救助」を名分に言い逃れできる事案ではない。
●文在寅なら怒らない
ーー結局、レーダー照射の意図は何だったのでしょうか?
鈴置:安全保障の専門家も韓国の専門家も、現場による嫌がらせと見る向きが多い。「広開土大王」の艦長かレーダー担当兵が、上部の指令なしに跳ね上がって犯行に及んだとの見方です。
韓国では「日本には何をやってもいい」という風潮があります。ことに21世紀に入り韓国が日本を見下すようになってからはそれが強まった。
韓国海軍にしても「旭日旗を掲げるなら国際観艦式に来るな」と言ってみたら、日本はろくな抗議もせずに引き下がった。竹島で演習しても抗議するだけ。これなら「射撃管制レーダーで脅して追い払ってやれ」と考える艦長や兵が出てくるのは当然です。
ーー文在寅(ムン・ジェイン)大統領の指示はなかった?
鈴置:それは分かりません。ただ、上からの直接の支持はなかったとしても、犯行は大統領に大いに関係します。現場がレーダー照射により日本との関係を悪化させても、日本との対決姿勢を明確にする文在寅政権なら処罰しないと誰もが考えるからです。
鈴置さんも、ムン大統領の指示があったとは言ってませんね!現場の指揮官や乗組員がやったのではって推測してます!
ここまででまだ3ページ目というのがすごいが、最後の4ページ目にも濃い内容の軍事分析が書かれている。これは読者が各自で目を通してほしいと思う。韓国が日本海で何をしようとしているのか、韓国は2020年以降に何を企んでいるか…ということが簡潔にまとめられている。情勢を見誤れば日本の危機が訪れる。
4ページ目を読んでると、何だか力が抜けてしまうような気分です・・・。日本はこのまま韓国にいいようにされてしまうんでしょうか?
まず分析が大事だ。韓国海軍は潜水艦を配備するが製造元はどこだったかな?大宇造船だな。ところで確か韓国政府は大宇造船に巨額の支援をしていたよな?日本が韓国をWTOに提訴をしようとしてるのはどうしてだっけ?
そうでしたね!じゃあ日本が韓国をWTO提訴してるのも、安全保障の観点からだったんですね!
経済面でもそうだが、軍事面でも見過ごせない動きだったからな。韓国の造船業をつぶせば日本にとっての安全保障上の脅威は消える。逆に日本の造船業がつぶされれば日本の安全保障は危機的状況に陥る。海上自衛隊も艦艇がなければ仕事ができないね。だから韓国を提訴して、国際社会の場で韓国の造船業はおかしいと糾弾するのが最も効果的な韓国への攻勢というわけだ。
日本政府の皆さん、そして自衛隊の皆さん!韓国の1919派は手ごわいです!気をつけてください!
そうだ。1919派は謀略と奇襲に長けた特定の思想を持つ集団だが、しっかりと対策を練って追い込めば必ず勝機が見えてくる。不意打ちでもなければ世界最強レベルの軍事力を持つ海上自衛隊の敵ではないよ。だから油断だけはどうかしないで、万全の態勢で有事の覚悟を持ってほしい。
そして韓国の皆さん、現実に目を向けるべきです!日本に勝つことは諦めてください!1000年後にまた会いましょう!さようなら!