- 自衛隊が米宇宙企業スペースXの「スターリンク」通信網の利用を開始
- 通信機能を強化し中露の衛星攻撃能力に対抗
- ウクライナ軍支援や他国衛星の活用も視野に
自衛隊が米宇宙企業スペースXの衛星通信網「スターリンク」の高速通信サービスを利用し始めたと報じられています。この通信サービスの利用は、試験運用段階に入り、来年度から本格運用に移行する予定です。この措置は、中露が衛星攻撃能力を強化していることを考慮し、通信機能を強化することを目的としています。また、防衛省は他国の衛星も活用する方向で調整を進めているようです。
スターリンクは、低軌道に配置された多数の小型衛星を連動させる衛星コンステレーションの一部であり、ウクライナ軍の通信を支える役割を果たしてきたことでも知られています。防衛省は、スペースXとの代理店契約を締結し、アンテナなどの通信機材を自衛隊の部隊に配備しています。現在、約10か所の基地や駐屯地で活用されており、訓練でも使用されています。
従来、自衛隊は静止軌道に打ち上げた独自の「Xバンド通信衛星」を活用していましたが、今回のスターリンクの利用は、民間の低軌道衛星コンステレーションを自衛隊が初めて使用するケースです。防衛省は今年度中に他の企業とも同様のサービスを提供する契約を予定しており、通信性能を確認した上で本格運用の可否を判断する予定です。
中露両国は他国の衛星に対して電波妨害の装置を運用しており、実際に妨害行為を行っているとされています。有事の際には通信衛星が攻撃を受けて機能不全に陥る可能性があり、それによって部隊の運用に支障が生じるおそれがあります。衛星コンステレーションは複数の衛星を使用しており、一部が破壊されても運用を継続できる特徴があります。
防衛省は昨年、防衛用の通信衛星などを多国間で共有する枠組みへの参加を表明しました。現在、参加に向けた手続きが進行中であり、同盟国や同志国との連携も進める方針です。