- 未完了を無視すると記憶・計画の仕組みを自らオフにしがちです。
- 「できたこと」強調は油断と見積もりミスを招き、失敗確率を上げます。
- 客観的リスク管理や経済学の知見は「欠け」を数える習慣を推奨します。
目次
はじめに
「今日もやれたことを数えよう、できなかったことは大したことない」――耳ざわりは最高ですが、実務と科学はそう甘くありません。未完了の把握は、脳の“続きやるぞ”スイッチを押し、失敗回避の思考を呼び込みます。逆に達成ばかりを数えると、安心感でコースティング(惰性走行)が起き、明日の事故や納期遅延に直結します。以下反論を5つ、ド派手にまとめます!
反論5選
1. 脳は「未完了」を覚えやすい⇒あえて残すと再開しやすい!?
未完了タスクは記憶に粘りつき、再開の動機を生みます。これはツァイガルニク効果として古典研究から現代レビューまで繰り返し示されています。達成だけを数えると、この自然な“再開ブースト”を捨てることになります。未完了を丁寧にリスト化→翌日の再開率UP、という流れが王道です。
実務TIP:未完了を「次に着手する最小の1ステップ」に分解してメモ化。さらにif–thenプラン(例:「9:00にPCを開いたらまず仕様書の赤入れをする」)を付けると達成率が統計的に向上します。メタ分析で有効性が示されています。
2. 「できたこと」羅列は油断を招く⇒人は達成後に“コースティング”しがち!
自己調整の理論では、ギャップ(未達)が行動の燃料です。ギャップが小さく見えるほど安心してペースが落ちる=コースティングが起きやすい、と説明されます。だから「今日もやれた」とだけ数える習慣は、翌日の緩みや手抜きを誘発しがち。ギャップの可視化(未完了の棚卸し)が持続的な推進力になります。
3. 現場の常識:「失敗した前提」で考える方が事故を防ぐ!?
医療・航空・IT大規模プロジェクトでは、プレモーテム(Pre-mortem)という手法が定着。「もう失敗した」と仮定して理由を洗い出すことで、リスクが事前に見える化され、回避策が増えます。達成だけを数える文化だと、こうした「失敗の芽」を見落とします。また、ニアミス(危うく失敗になりかけた事例)を軽視すると、リスク選好が上がって大事故を招くことが研究で示されています。
4. 経済学の盲点:機会費用を忘れると、時間もお金も溶ける!!
「今日やれたこと」を数えるだけだと、その間に失った他の選択肢(機会費用)を見落としがち。実験研究やメタ分析では、人は放っておくと機会費用を系統的に過小評価する、と一貫して報告されています。つまり「やれなかったこと」を明示的に並べるのは、意思決定の質を保つ経済的セーフティでもあります。
5. ネガティブ想定は“毒”じゃない⇒防御的ペシミズムは成績を上げる!
「悪い展開を具体的に想像→備える」戦略=防御的ペシミズムは、特に不安傾向の人に有効で、成績や気分をむしろ改善します。無理にポジティブ思考を強要するとパフォーマンスが落ちることも。個人差に応じて、できなかったことの分析と備えを組み合わせるのが合理的です。
「やれなかったこと」を伸びしろに変える5つの実装ワザ
- ① 1日3件だけ未完了を記す(増やしすぎると負荷↑)→翌日のトップ3に昇格。
- ② if–thenプラン化:「もし9時になったら→設計レビューを10分だけ再開」など。
- ③ プレモーテム5分:明日コケた想定で「原因3つ」と「回避策3つ」を速書き。
- ④ ニアミス記録:ヒヤリとした事例を1行で記録→毎週まとめて是正。
- ⑤ 機会費用の声出し:「この30分で他に何が落ちる?」を会議冒頭に確認。
質疑応答コーナー
セイジ
達成だけを数えるとメンタル安定しますよね??
プロ先生
一時的な気分は上がりますが、行動はギャップで動きます。達成偏重はコースティングで翌日ペースが落ちやすいです。未完了の量ではなく次の一手まで落とすと、気分も行動も守れます。
セイジ
ネガティブ想定って不安を増やすだけなんすか??
プロ先生
防御的ペシミズムは「不安→準備」に変換する戦略です。想定だけで終わらず、チェックリストや手順に落とし込むとパフォーマンスが上がる傾向があります。人によって効き方が違う点は押さえますね。
セイジ
未完了を数えると自己肯定感が下がりません??
プロ先生
「数える目的」を自己否定ではなく計画更新に置けばOKです。未完了→if–then化→翌日の最初の10分で着手、という設計なら、むしろ達成感が日次で回ります。肯定感は“進捗の再現性”で上がりますね。
まとめ
- 未完了は脳のリマインダー!消すより「次の一手」に変換します。
- 達成の過剰強調は油断のもと!ギャップ可視化で惰性走行を防ぎます。
- 失敗前提・機会費用・ニアミス――プロの現場は「欠け」を見て守ります。