- 「相談所より俺の方が成約率↑」は、方法や定義・根拠が非公開なら景品表示法の比較宣伝ルールに抵触リスク。
- 結婚相談所は特商法や個人情報保護法の保護・審査があるが、個人の“紹介業ごっこ”にはない。
- 統計的にも婚姻数は減少傾向、出会いは多様化中。「8000人に奢った」母集団は偏りだらけで“婚活データ”とは言えない。
目次
はじめに
「29歳インフルエンサー男さん」が「8000人に奢った経験から、年収1000万以上の男性は結婚相談所より自分に相談すべき」と唱えたとか。勢いはありますが、数字の定義・比較方法・法令順守・データの客観性が見えません。この記事では、法律・統計・業界の実務という“冷静な物差し”で、反論5選にまとめます。
反論1：「成約率が相談所より高い」—根拠を示さない比較は“優良誤認”の地雷!?
「成約率が高い」と他サービスと比べるなら、比較宣伝の基本要件（比較対象・指標の同一性、調査時点と方法の明示、再現可能性など）を満たす必要があります。これを欠くと景品表示法の不当表示（優良誤認）リスクが生じます。消費者庁のガイドでは、比較の方法が公正で、裏付けデータや調査時点・機関の明示が求められると示されています。ドヤ顔の「8000人！」だけではアウト寄りです。
例）「自分は相談所より成約率が高い」なら、分母（どこからどこまでの対象）・分子（“成約”の定義）・期間・測定方法の開示が必須です。示せないなら“単なる宣伝トーク”扱いになりがちです（法律的にもリスキー）。
反論2：「8000人に奢った＝婚活ビッグデータ」ではないｗ（選択バイアス＆定義ズレ）
「奢った相手」は自分のフォロワー層や都市部の若年男性中心など、標本が偏る可能性大。婚活の母集団を代表しません。しかも「奢った場の会話」は婚活行動の実測データではなく主観的回想。さらに“成約”の定義が不明なら、相談所の「成婚退会」など業界の指標と比較できません。
現実の市場でも出会いの経路は多様化しており、近年はSNSやアプリなどオンライン経由が直近の結婚の約1割強（13.6%）を占めます。私的ネットワーク“だけ”が万能という話にはなりません。
反論3：相談所は「証明書ベース」で身元ガチ確認、個人の“口約束マッチング”はリスク高すぎｗ
大手連盟（例：IBJ）を含む多くの結婚相談所は、入会時に独身証明書・本人確認書類・収入証明（男性）・学歴証明（短大以上）などの提出を求めます。身元や社会属性の裏づけがあるからこそ、条件交渉やトラブル時の対応が可能です。個人インフルエンサーに渡す“年収や恋愛履歴”は、裏付けのない自己申告になりがちで、なりすまし・虚偽のチェックも困難です。
また、結婚相談所は特定商取引法（特定継続的役務提供）の規制対象。クーリング・オフ（書面受領日から8日）や中途解約時の上限（「2万円または残額の20%の低い方」等）など、消費者保護の仕組みが法律で整備されています。私的な“紹介業ごっこ”に同等の保護は通常ありません。
反論4：個人に“婚活カルテ”を渡すの、個人情報保護法の観点で普通にキケン!?
年収・家族構成・恋愛歴・健康等は個人情報の塊。事業として収集・管理・第三者提供をするなら、規模にかかわらず個人情報取扱事業者の義務（利用目的の特定、適正取得、安全管理措置、第三者提供の同意取得 など）が原則必要です。小規模でも“やるならやるべきことはある”のが法の考え方。個人インフルエンサーがこれらを設計・運用・監査できるのか、相当に疑問です。
さらに、オンライン契約書面の交付やクーリング・オフ連絡の電磁的方法の扱いもアップデートされています。法令トラブルに巻き込まれない体制が前提です。
反論5：「市況補正なしの成約率」は錯視！婚姻件数は減少、指標は“同条件比較”が鉄則
婚姻件数はここ数年で減少。2023年は47万4717組で前年から減りました。分母（婚姻市場規模）が縮小する局面では、“成約率”の見かけも影響を受けます。よって、年齢層・地域・年収・婚活チャネル・期間を揃えた上で比較しないと統計的に無意味。私的な「8000人に奢ったサンプル」と、証明書ベースの会員市場を単純比較するのはルール違反です。
なお、市場全体ではオンライン経由の結婚比率が伸びており（13.6%）、相談所もアプリも“使い分けの時代”。どれか一つを神格化するのは非科学的です。
【質疑応答コーナー】
セイジ
成婚率って、会社ごとに定義バラバラっすか??
プロ先生
そのとおりです。多くは「成婚退会」の定義で算出しますが、分母（入会者？活動者？）や分子（婚約？交際成立？）が違うと数字も変わります。比較主張をするなら調査方法や時点の明示が必要で、示さないと優良誤認リスクが出ます。数字の出どころ確認が基本っす。
セイジ
個人に相談してマッチングしてもらうの自体は、法的に問題ないっすよね??
プロ先生
友人の善意の紹介は一般的ですが、対価を得て個人情報を継続的に収集・管理・提供するなら、規模を問わず個人情報保護法の義務（利用目的の特定や安全管理措置など）が絡みます。守るべき作法があることを忘れちゃダメっすね。
セイジ
年収1000万なら、SNSやインフル経由の方が早いっすよね??
プロ先生
速さは状況次第です。オンライン経由の結婚割合は13.6%まで伸びましたが、身元や条件の検証は相談所の方が盤石です。証明書ベースの土俵で交渉力を確保しつつ、紹介やアプリを併用するのが堅い“二刀流”っす。
まとめ
- 「俺の方が成約率↑」は、根拠と方法の開示がなければ法的にも統計的にも弱い！（比較宣伝ルール＆定義の透明性）。
- 相談所は証明書で身元確認＋特商法＆個人情報保護の“安全網”。個人マッチングはここが薄い。
- 婚姻数は減少・出会いは多様化。数字は“同条件で比較”、戦略は相談所＋複線が吉！
数字は定義と方法を離れた瞬間に魔法になります。「8000人に奢ったｗ」≠「8000人分の婚活データ」。法・統計・実務の三点で見れば、「相談所よりオレ」論は証明の壁に跳ね返ります。証明書ベース×マルチチャネルで、静かに勝ち筋を取りにいきましょう。
