- 「今そうなってないからダメ」という発想自体が、科学・ビジネスの歴史と矛盾している事例が山ほどあります。
- 素人アイデアにも価値があり、「なぜそうなっていないか」を一緒に考えるのが本来のプロの役割です。
- 相手を「バカ」呼ばわりする態度は、チームの心理的安全性を壊し、生産性を下げることが多いです。
目次
はじめに
ある技術者が「バカな人は『なぜ今そうなっていないのか？』を考えないから、素人のくせに業界を揺るがすアイデアとか言い出すｗ」と語ったとします。パッと聞くと「それっぽい」ですが、よく考えるとツッコミどころ満載です。歴史上のイノベーション、心理学の研究、組織論などの事実を踏まえると、この発言はかなり雑で、自分のバイアスを棚に上げている可能性が高いです。本記事では感情的にキレるのではなく、理詰めな反論を5つ紹介します。
第1の反論：「今そうなっていない＝全部ダメ」って短絡的すぎませんか!?ｗ
◆技術の世界でも「まだそうなってない」例は普通にあります
「なぜ今そうなっていないのか？」という問い自体は、確かに大事な視点です。しかしそれを、「だからお前のアイデアは全部バカｗ」と切り捨てる根拠にするのは、かなり乱暴です。歴史を見れば、技術的には可能でも、コスト・法規制・市場規模・文化的な受容性などの理由で、あえて実現していないアイデアはいくらでもあります。
例えば、キャッシュレス決済やオンライン会議は、技術的にはかなり前から可能でしたが、インフラ整備やユーザーの慣れ、セキュリティ不安などの理由で、広く普及するまで時間がかかりました。「今そうなっていない」のは、「バカだから」ではなく、いくつもの条件がまだ揃っていないだけということが多いのです。
◆「現状維持バイアス」を正当化しているだけの可能性
人間には、今ある状態を過大評価してしまう現状維持バイアスという心理的傾向があると言われています。今のやり方を守りたい人ほど、「今そうなってない」が魔法の言葉になりがちです。 「今そうなってない」⇒「だから意味ない」⇒「だから検討しない」……と繰り返してしまうと、新しい案を真面目に評価する機会を自分で潰していることになります。
つまり、「今そうなっていない」ことだけを理由に素人アイデアを一蹴するのは、現状維持したい自分の感情を、もっともらしい理屈で包装しているだけかもしれません。これはプロとしても危険な思考パターンです。
第2の反論：専門家だって未来予測は外しまくってる事実ｗ
◆「プロの直感＝絶対正しい」ではない
技術者が「そんなのとっくに検討済みｗ」と言いたくなる気持ちは分かりますが、研究では、専門家の予測もかなりの確率で外れることが知られています。テクノロジーや市場の変化は複雑で、誰にも完璧には読めません。
実際、スマホ、インターネット、クラウド、SNSなど、今では当たり前の技術やサービスについても、初期の頃は「そんなもの広がるわけがない」と言った専門家のコメントが山ほど残っています。そのたびに歴史は、「絶対ないｗ」と断言した人たちを軽く飛び越えてきました。
◆「素人の感想」でも、新しい視点を含んでいることがある
素人のアイデアには、技術的な粗さや誤解も確かに多いです。ただしその中には、現場のプロが見落としがちなユーザー視点や、異業種ならではの発想が紛れ込んでいることもあります。 プロの仕事は、それを雑に叩き潰すことではなく、
- どの部分が現実的で、どの部分が難しいのかを説明する
- アイデアの「核」となる問題意識を拾い上げる
- 既存技術と組み合わせれば活かせないか検討する
といった形で、建設的に扱うことです。 「素人のくせにｗ」と笑う前に、自分の予測だってそこまで当たってないという前提に立つ方が、むしろプロらしい態度だと言えます。
第3の反論：「なぜそうなっていないか」を考えるのは全員のトレーニング課題です！
◆考える習慣は、生まれつきではなく学習で身につく
発言した技術者は「バカな人は『なぜ今そうなっていないか』を考える習慣がない」と言っていますが、考える習慣は訓練で身につくものです。最初から誰もが「技術的・法的・経済的な制約」を全部並べて考えられるわけではありません。
むしろプロ側が、「この発想は面白いけど、今はこういう理由で実現してないんだよ」と説明することで、相手も少しずつその視点を学んでいきます。それこそが教育であり、ナレッジ共有です。
◆「教えずにバカにする」のは、単にコミュニケーション能力の欠如
「なぜ今そうなっていないか」を相手が考えていないなら、 「じゃあ一緒に分解して考えてみようか」と導くのがプロ。 「考えてないお前がバカｗ」で終わるのは、単に説明をサボっているだけとも言えます。
本当に有能な人ほど、相手を見下さずに分かりやすく説明できることが多いです。逆に、やたらと「バカ」を連発する人は、自信のなさやフラストレーションを他人にぶつけているだけ、という解釈も成り立ちます。
第4の反論：「バカ」呼ばわりはチームの生産性をガチで下げますｗ
◆心理的安全性がないと、いいアイデアは出てこない
組織心理学の研究では、メンバーが「バカにされない」と感じているチームほど、失敗から学び、アイデアを出し合い、成果を出しやすいことが分かっています。これがいわゆる「心理的安全性」です。
逆に、誰かがすぐ「バカ」「素人のくせに」と言う環境だと、 ・新人は何も質問しなくなる ・問題の早期発見が遅れる ・表向きは平和でも、裏では不満が溜まる といった現象が起こりがちです。
◆「俺は正論を言ってるだけｗ」は、ただの自己満足になりがち
「いや〜、オブラートに包まない俺カッコいいｗ 正論でぶった切ってやったｗ」と思っている人もいますが、チーム全体で見ると、発言意欲やチャレンジ精神を削っているだけのことが多いです。
短期的にはスッキリしても、長期的には「何も言わない方が楽」という空気を生み、イノベーションの芽を摘んでしまいます。それは技術者としても、組織人としても損な行動です。
第5の反論：「素人アイデア」をうまく扱える人こそ本物のプロ！
◆現場で価値になるのは「翻訳力」
実務では、エンジニアや専門家は、素人のざっくりした不満やアイデアを、要件や仕様に翻訳する役割を求められます。 「こういうの作れませんかね？」 「もっとサクサク動くやつ欲しいっす」 といったフワッとした要望を、
- どんな制約があるのか
- どこまでなら現実的にできるのか
- コスト・スケジュールとどう折り合いをつけるのか
といった具体的な議論に落とし込むのがプロの仕事です。
◆「相手はバカ」と決めつけた時点で、自分の成長も止まる
「バカな人がバカなアイデアを持ってくるｗ」としか見ていないと、 ・ユーザーの本音を拾えない ・異業種からのヒントを見逃す ・説明力も交渉力も鍛わらない という状態になりがちです。
一方で、「素人の発想にも、どこかに現場の痛みやニーズが埋まっているかもしれない」と考える人は、情報を多面的に拾えるので、長期的に見ると有利です。 つまり、素人アイデアを嘲笑して終わる人よりも、一緒に「なぜ？」を整理できる人の方が、最終的には周囲から信頼されるプロになりやすいのです。
質疑応答コーナー
セイジ
素人がアイデア出すのって、やっぱ邪魔なんすか?? 会議とかで黙ってた方がいいっすよね??
プロ先生
邪魔どころか、むしろ貴重な情報源ですよ。素人だからこそ見える違和感や不便さってあります。もちろん、全部が実現可能なわけではありませんが、「それは今は難しいけど、こういう部分は参考になる」と拾っていくことで、企画や改善のタネになります。黙るのではなく、「こう感じるんですが、理由ってありますか？」という聞き方をすれば、建設的な会話になりやすいです。
セイジ
『なぜ今そうなってないか考えろ』って言われたら、どう返したらいいんすか?? 頭良くないとキツいっすよね??
プロ先生
完璧に答えられなくて大丈夫です。むしろ、「自分なりにここまでは考えたんですが、この先が分からなくて教えてほしいです」と返すのがおすすめです。技術的・法的・コスト的な制約は、一度説明を聞けば少しずつ理解できます。大事なのは、質問することをやめないことと、相手の説明を吸収しようとする姿勢です。頭の良さより、学び続ける姿勢の方がずっと重要ですよ。
セイジ
逆に、自分がちょっと詳しい側になったとき、『素人はバカｗ』ってならないためには、どう気をつければいいんすか??
プロ先生
まず「自分も別の分野では完全な素人だ」と意識することです。そうすると、相手を見下しにくくなります。それから、相手が変なことを言ったときも、いきなり否定するのではなく、「そう思った理由」を先に聞くのがコツです。理由を聞くと、意外と筋の良い問題意識が隠れていることもあります。「バカ扱い」ではなく、相手の知識レベルに合わせて説明するのがプロのコミュニケーションだと覚えておくといいですね。
まとめ
- 「今そうなってない＝バカ案ｗ」ではなく、歴史やバイアスを踏まえて冷静に評価する姿勢が大事です！
- 素人アイデアにもニーズや新しい視点が埋まっており、それを翻訳・選別するのが本物のプロの仕事です！
- 相手を「バカ」と決めつけるより、「一緒に考える」スタイルの方が、チームの成果も自分の成長も大きくなります！
