中国が米国の関税攻勢をものともせずに、他国から牛肉や豚肉を調達する動きに出ています。これで米国は困るかと思いきや、大豆に関しては米国も売り先をEUに切り替え。中国へ売らない姿勢を鮮明にしました。さらに追い詰められる中国は一体どうなってしまうのでしょうか。
米国産牛・豚肉の対中輸出、貿易戦争が裏目に?中国が代替調達の動き
2018年8月12日 22:33【8月12日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が掲げる「貿易戦争」の重要な目的は中国政府に圧力をかけ、米国製品を「買わせる」ことだ。しかし米国からの食肉の輸入に関して言えば、中国は単に他の相手と取引するという結果になる可能性もある。
米国の追加関税措置に対し、中国政府は米国産の農作物をはじめとする輸入品に関税を上乗せする報復措置を発動したことで、米国産牛・豚肉の輸入価格は急騰。他の輸入品と同様に、中国の食肉輸入業者も他の国々からの調達を模索している。
食肉業界の世界的大企業であるPMIフーズ(PMI Foods)の上海法人幹部は、「(報復)関税で米国産の肉の輸入価格が大幅に上昇したたため、他の国から調達する」と明言。同社は中国の報復関税発動後、既に米国産豚肉の輸入を停止している。この幹部は「牛肉はオーストラリアや南米からの買い付けを増やす。カナダからは、若干増やすかもしれない」と語った。また、関税の応酬がもたらす取引動向の変化が米国以外の生産国に有利に働くのは「確実」で、米国はその分だけ不利になるとの見方を示し、「中国市場が代替調達を目指すのは間違いない」と述べた。
(以下略)
EUが米産大豆“爆買い”3・8倍 自動車関税見送りの見返り実行
2018.8.2 07:56欧州連合(EU)欧州委員会は1日、7月のEU加盟国の米国産大豆の輸入量が前年同月の3・8倍以上に増えたと発表した。ユンケル欧州委員長はトランプ米大統領と7月に会談した際、米国が欧州車への高関税を見合わせる事実上の見返りに、大豆輸入拡大の意向を示しており、約束は果たしたと訴えた形だ。
EUの最大の大豆輸入元はブラジル。しかし、米中の貿易摩擦激化で中国が米国産大豆に報復関税をかけたことで、米国産がだぶついて価格が下落した一方、ブラジル産が高騰。こうした市場の動きも背景にある。
欧州委によると、米国産大豆の輸入は昨年7月の9万3850トンから、今年7月は35万9305トンに跳ね上がった。大豆輸入量に占める米国のシェアは9%から37%に急拡大した。
ユンケル氏はこの日「EUは米国からもっと大豆を輸入できる。今それが起きている」と強調。
トランプ政権は、いったん約束した中国製品への追加関税発動の保留をほごにした経緯がある。EUは同様の事態に陥らないよう、米EU合意の尊重こそが米国の利益になると暗に示したとも言えそうだ。(共同)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/180802/mcb1808020756016-n1.htm
大豆の穴埋めをEUにお願いするトランプ氏の強かさ
中国が大豆に関税をかけて、逆に価格が下がったんですか?
米国産の大豆の値段だけが高騰すれば、中国の業者は誰も買い付けません。中国外であれば米国産の大豆は余りますので、当然価格は下落することになります。ここの穴埋めをEUにお願いしたという形ですね。EUもトランプ氏には欧州車への関税見送りという恩を受けており、これに報いたわけです。中国内では却って大豆が不足し高騰する事態に陥るかもしれません。
トランプ、思ったよりやるな…。全世界を敵に回してるように見えて、巧妙に味方を増やしてってる。でも対中国だけは一切妥協していないね。
確かに、トランプ大統領はヨーロッパにも苦言を呈していた印象が強いです!
それはおそらくNATOの件ですね。トランプ氏は始めに無茶な要求を出し、そこから落とし所を探っていくというスタイルを身につけました。EUもそれが分かってきたので、話せば分かる相手だと理解できれば怖くはありません。日本政府もそれを身にしみて感じていることでしょう。しかし中国だけは別です。
トランプ氏はビジネスの真髄を理解しとるのう。妥協のない姿勢こそがお互いの利益を生むんじゃよ。表面上の言葉に流されてはいかん。
米国産の食肉にはほぼ影響なし
中国としてはアメリカ産の食肉を輸入しないことが圧力になると考えているようですが、どうなるんでしょう?
これもさほど意味はありません。なぜなら食肉の供給路は限定されており、中国が他の国から買い付けるなら必ずその分の不足が生じるからです。仮に中国が米国産の食肉を一切買うのをやめたとしましょう。中国が買わなかった分が余り、価格が下落します。他国産に比べて割安となるため、買い付けを行なう国は必ず現れます。つまり大豆と同じ展開になることが予想されるのです。
これ、実は一番損するのは中国なんじゃ…?
鋭いですね。中国は米国産を自ら輸入できない態勢に追い込み、その分他国産の食料を割高で買わされることになるのです。欧州の大豆調達先は主にアルゼンチンでしたが、中国がより高い値段で買い付けを始めてしまい供給不足に陥った背景があります。今や経済危機の真っ最中であるアルゼンチンである程度安く牛肉が食べられるのは、自国内分を確保しているからと言われています。
世界中の食肉業者や穀物業者が中国に高値で売り付けて、一方中国以外の国は米国産を安く調達できるようになる。簡単に言えばこういう構図だね。
じゃあ、中国の一人負けになってしまいますね!
結局中国も日本と同じように食料やエネルギーを輸入に依存しているからね。自国民の分も賄えないというのは致命的だよ。日本の自給率の低さを笑えないと思う。米国と一戦を交えるのは無理があったんだよね。
なぜAFPは中国寄りの記事を書いたのか
それにしては、記事の論調が中国寄りですね・・・。AFPさんは貿易戦争が裏目になるとまで書いてます。
それこそが米国の狙いなんじゃないの?中国を油断させる的な話だと思う。
このまま貿易戦争を続けることが、中国にとってマイナスなのは明白ですね。中国に勝ち目がないと悟らせてしまってはいつ降参するか分かりません。それは米国の望み通りの展開ではありませんので、敢えて中国が有利だと思わせる報道をしている可能性は高いです。
そうか!世界中みんなで中国政府を騙してるんですね?
しーっ。本当のことを相手に教えたらまずいだろ?わざと不利なように見せかける方が最後は得をするってことさ。相手のカードも全て把握できるしね。
でも、それってホントなんですか?表の報道では聞いたことがありません。
日本のマスコミはそういうのを絶対報道しないし、素で中国寄りの報道をしたがるからね。意図せずに米国の思い通りに踊らされてしまってる可能性はあるよ。
その通りです。良かれと思ってしたことが相手に利することは少なくありません。日本を守ろうとしているはずが、結果的に日本を守れない状況に追い込んでしまっていることはありませんか。意図せずそれを行なったならば過失ですが、中にはそれを狙い敢えて過激な方向に誘導している人もいるかもしれませんよ。
心当たりがいくつもあるな…。まあこの話はこれくらいにしておこう。