- 生成AIは“上手い人”の価値をゼロにせず、むしろ下位層を底上げしつつ上位のレバレッジを拡大します。
- 価値があるのは「たくさん失敗」ではなく“賢い失敗”+低い失敗率&素早い復旧です。
- 人が選ぶのは“イイやつ”だけではなく、<あたたかさ×有能さ>の掛け算です。
目次
はじめに
SNSの勢いある主張は痛快ですが、実務に役立つかは別問題です。「生成AI以後は『なんでも上手くやれるヤツ』の価値がゼロ」「『失敗を楽しむイイやつ』がビットコイン並みに高騰」との断言は、面白いけれど事実とはズレがあります。ここでは学術研究や大規模調査のエビデンスをもとに反論を5つに整理。熱量はそのままに、データでスパッと切り込みますw
反論1:「上手くやれるヤツの価値はゼロ」⇒データは“逆”。AIは下位を底上げしつつ上位のレバレッジを増幅!
生成AIの現場実験(大手の数千人規模コールセンター)では、AIアシスタント導入で生産性が平均14%アップ。とくに経験の浅い層が大きく改善し、上級者の改善は小さめという「ギャップ圧縮」は確認されました。ただし、これは上位の価値ゼロを意味しません。AIが“上位者の暗黙知”を手本化して新人が速く育つ一方、上位者は難案件や設計・品質監督・プロセス改善に回り、組織の総アウトプットを引き上げます。研究本体も、AIが熟練者スキルを可視化・伝達することで生産性の底上げが起きると示しています。価値は“ゼロ”どころか、役割がより戦略的にシフトするのです。
反論2:「失敗いっぱい=価値高い」⇒違うw 評価されるのは“賢い失敗”+低い失敗率&早い復旧
心理学と経営学では、失敗は避けるだけでなく学ぶ対象だと繰り返し示されています。エドモンドソンは「インテリジェント・フェイラー(目的・仮説・学びが明確な探索的失敗)」の重要性を提唱。しかし、反復可能な作業での雑な失敗はむしろ害で、区別が命です。
さらにソフトウェア運用の世界標準指標(DORA)は、変更失敗率と復旧時間(MTTR)を下げるチームが高業績だと整理。トップ層は「楽しく敗戦処理」より、そもそも失敗を少なくし、起きたら即復旧で価値を生みます。失敗を「たくさん」ではなく、「少なく・早く直す」が正解。
加えて、組織心理のレビューは、エラーマネジメント(検知・被害最小化・学習)を備えた文化が業績と結び付くと総括。陽気さだけでは価値になりません。
反論3:「人間は勝ちたいわけじゃない。イイやつとワイワイしたいだけ」⇒半分当たり、でも残り半分が大事!
人の評価軸は古典的研究で“あたたかさ(善意)”ד有能さ(能力)”の二次元と定義されています。好かれるだけ(高い温かさ・低い有能さ)だと「良い人だけど頼りない」評価に落ちやすく、意思決定では温かさと能力の掛け算が効きます。
実務データでも、人格特性のメタ分析は誠実性(コン科学で言う“やり切る力”)が最も業績と相関、協調性(“イイやつ”)は職種次第で限定的と示します。「イイやつ」は重要ですが、結果を出す力とセットで評価されるのが現実です。
反論4:「価値がビットコイン並みに高騰」比喩は破綻w ボラ高すぎ・崩落リスク大=評価尺度に不適
中央銀行・規制当局のレポートは、ビットコイン等の極端な価格変動を繰り返し指摘。たとえば米ニューヨーク連銀は2021年ピーク後に70%超下落と明記し、過去サイクルでも同程度の急落があったとまとめます。これを人材価値の比喩にするなら、「高騰」だけでなく暴落も常態という意味になってしまう。人の市場価値を語るのに、変動が激しすぎる資産を尺度にするのは不正確です。
またBIS(国際決済銀行)は、高ボラが通貨としての実用性を妨げると結論。ECBも日常取引に不向きと指摘。つまり「安定価値」の象徴どころか、不安定の象徴。比喩として筋が悪いw
反論5:「なんでも上手くやれるヤツ」こそ横断課題で重宝!──起業・経営・イノベーションの実証
経済学では、起業家は“ジャック・オブ・オール・トレーズ”(バランスよい複技能)が有利という理論と実証が確立。さらに、企業トップの世界では、一般経営スキルに富む“ジェネラリストCEO”に賃金プレミアムすら観測されています。ゼロどころか、状況次第でプレミアム。
イノベーション研究でも、異分野知の組み合わせ(リコンビネーション)がブレークスルーを生むとされ、幅×深さ(T型)の人材・チームが強い。これは生成AIの“汎化”が進む今こそ価値が増す領域です。
質疑応答コーナー
セイジ
結局、AIで「上手い人」の給料って下がるんすか??
プロ先生
一律には下がりません。AIは初心者を底上げしますが、上位は難案件・設計・品質のレバレッジが効くので役割が上流化します。実地の生産性実験も「平均14%改善、特に新人に効果大」という結果で、上位は価値ゼロ化ではなくミッションが変わるイメージです。
セイジ
失敗は多いほうが学べるっすよね??
プロ先生
量ではなく質です。仮説を持って学びに直結する“賢い失敗”はOK。でも反復作業でのケアレスミス増産はアウト。運用現場の指標でも、優秀チームは変更失敗率を下げ、復旧を速めることで価値を出します。「たくさん失敗」は評価されませんw
セイジ
万能型とスペシャリスト、どっち目指すのが勝ちますかね??
プロ先生
仕事の性質次第です。探索・起業・事業横断はジェネラリスト優位。定義が固い専門課題はスペシャリスト優位。現実はT型(幅×深さ)の組み合わせが最強。経営層の報酬データやイノベーション研究もこの方向を示します。
まとめ
- AIは「上手い人ゼロ化」ではなく、下位を底上げ+上位の役割を上流化⇒組織の総アウトプットが伸びます。
- 評価されるのは“楽しい敗戦処理”ではなく、賢い失敗+低失敗率+高速復旧です。
- 人は“イイやつ”だけでなく有能さも重視。万能型は横断課題でプレミアムが乗ることもあります。























