- “異常な熱狂”はSNSの専売特許ではなく、前SNS時代から歴史的に存在します。
- 日本の最新大規模調査では「孤独感」は直近で大きく悪化していません。
- 要点3:SNSの影響は使い方で真逆に変わります(能動的交流はプラス、受動的閲覧はマイナス傾向)。
目次
はじめに
ある“29歳インフルエンサー”の「SNSの向こう側に異常なモチベーションを注ぐ人=新しい孤立」という趣旨の発言が話題ですが、言い切りの直感はしばしば事実とズレます。そこで今回は、国内公的統計や査読研究の“数字と言葉”を土台に、反論5選をお届けします。感情論ではなくエビデンスで、思い込みと現実の差をサクッと見極めます!
反論①:「異常」は新現象じゃない⇒ファン熱狂は半世紀以上の“通常運転”!
ポイント:前SNS時代から、特定対象への強い集中投資(時間・情動)は珍しくありません。
1960年代のビートルズ熱は、警察のエスコートが必要なほどの“集中的”熱狂で、叫び・追走・失神まで記録が残る現象でした。つまり、対象への一極集中はSNSよりはるか以前から確認されており、「SNSが新たに生んだ異常」という主張は歴史的事実と整合しません。
さらに心理学的にも、パラソーシャル関係(片想い的な疑似的“推し”関係)は長らく研究され、気分改善や心理的充足に寄与しうる側面が示されています(万能薬ではない)。“異常”と決めつけるより、“人間がもともと持つ仕組み”として捉えるのが妥当です。
反論②:「新たな孤立」か?⇒最新の日本の大規模調査では“横ばい”です!
ポイント:直近の客観データは「濁流のように悪化」を裏づけていません。
内閣府が無作為抽出2万人を対象に行った令和6年(2024年)調査(有効10,876人)では、「孤独感がしばしば・常にある」4.3%、「時々ある」15.4%で、前年(令和5年)と大きな差なしと明記。若年層でやや高いものの、全体トレンドでの急悪化は確認されないのが現実です(UCLA孤独感尺度3項目版も併用)。公的統計は「問題の存在」を否定しませんが、“新たな”や“濁流”といった断定表現は過剰になりがちです。
加えて、日本政府は孤独・孤立対策推進法(2023年成立、2024年施行)で全国的な対策を制度化。「社会課題化=データで把握し、仕組みで対応」という段階に入っています。
反論③:「SNS=孤立増幅装置」は早計⇒“使い方”で効果が真逆に!
ポイント:能動的交流はプラス、受動的“見るだけ”はマイナス寄り――という実証が多数。
Facebookのログ+縦断調査を用いた研究では、コメントや個別やり取りなどの能動的コミュニケーションが、結びつきの強化や主観的ウェルビーイングの向上と関係。逆に受動的な眺め見はネガティブ感情に結びつきやすいとの知見が積み上がっています。「SNS=悪」ではなく、“どう使うか”が肝です。
さらに、SNS利用はブリッジング型の社会関係資本(ゆるく広い繋がり)を増やし、社会的支援や信頼と関連するという古典的知見も。“幅広い弱いつながり”が個人の資源になるという点は、SNS普及以前から社会学が示してきました。
反論④:「一点集中」はむしろ成果を生むことも⇒“弱いつながり”+“クラファン”の現実!
ポイント:オンラインの一点集中は、雇用・学習・資金循環など“実利”に変換されます。
LinkedInの大規模ランダム化実験(数千万規模)は、弱いつながりが就業機会の伝播に有利であることを因果的に示しました(「弱すぎても強すぎてもダメ」という非線形性も)。“一点集中の熱量”が出会いと機会を生む現実は、もはやデータで裏づけられています。
さらに日本のクラウドファンディングは、SNS発の認知が資金に直結。CAMPFIREの累計支援額は約1,000億円(2011–2025)、READYFORは累計500億円到達(2025年9月発表)と、ネットの“熱”が公共・文化・医療の資金循環を実際に動かしています。「濁流」どころか“社会的価値の流路”になっているケースは多数です。
(注:支援の多くがスマホ・SNS経由で知るという実務側の証言も。オンライン熱量の社会実装は、数字でも確認できます。)
反論⑤:「8000人に奢った体験=普遍」はNG⇒選択バイアスで一般化不能!
ポイント:便利抽出(コンビニエンスサンプリング)は“その場の集団”の特徴に強く引っ張られます。
出会いやすい人だけが集まるサンプルは、母集団の代表値になりません。臨床・災害医療の方法論レビューでも、コンビニエンスサンプリングは多様なバイアスを含み、一般化に制約があると明言。「俺の周りでこうだった」→「世の中はこうだ」は研究デザイン上の飛躍です。経験は貴重でも、政策・一般論には“代表性のあるデータ”が必須です。
質疑応答コーナー
セイジ
SNSで推しに全振りしてる人、やっぱ“危ない人”っすか??
プロ先生
「危ない」とは限りません。歴史的にも強いファンダムは常在で、気分の改善などのプラスも確認されています。ただし迷惑行為や生活上の支障が出るなら介入が必要。現実の生活機能を基準に見極めるのがコツです。
セイジ
「SNS=孤立」って思いがちだけど、実は“使い方”次第なんすか??
プロ先生
そうです。コメント・やり取り・発信などの能動的交流はプラスに働きやすく、受動的な眺め見はマイナス寄りという傾向が実証されています。時間制限・通知整理・小さな相互交流を増やすのが実践のコツっすね。
セイジ
「データで見る」とき、何をチェックすれば良いっすか??
プロ先生
①サンプルの取り方(無作為か?)、②規模(n)、③測定指標(例:UCLA孤独感尺度)、④時系列での変化、⑤一般化可能性です。日本なら内閣府の全国調査が基点。個人経験や便利抽出は一般化に不向きと覚えましょう。
まとめ
- 「異常な熱」はSNS固有ではなく歴史の常連。決めつけはNG!
- 日本の最新大規模データでは“新たな孤立が濁流化”の証拠は乏しい。
- SNSは“使い方が結果を決める”。能動交流と公的データを味方に!







































