- 岸田首相の「1000円最低賃金」目標の重要性と深刻さ
- 最低賃金の国際比較と日本の低水準の問題
- 中小企業への影響や柔軟な対応の必要性
岸田文雄首相が最低賃金を「1000円」に引き上げることを掲げたことについて、その深刻さについて考えてみましょう。
最低賃金が1000円という水準は、国際的に見ても非常に低いと言えます。他の先進国や欧州に比べても低く、K国ですら下回っています。最低賃金は本来、働くすべての人が最低限の生活水準を維持できるようにするためのものであり、社会政策の一環として位置付けられます。もし最低賃金がフルタイムで働いても生活保護水準を下回っている場合は、人権上の問題となります。
安倍政権時代から政府は最低賃金引き上げを主導してきましたが、最低賃金に近い水準で働く人の割合が増えていることから、最低賃金の引き上げが社会に与える影響がますます大きくなっています。かつては最低賃金に近い水準で働いている人は主にパートやアルバイトが多く、全労働者の一部に過ぎなかったのですが、現在は非正規労働者が増え、最低賃金に近い水準で働く人の割合が増えています。そのため、最低賃金の引き上げに対応できない中小企業が市場から退出する可能性も指摘されています。
ただし、最低賃金を引き上げる際には、柔軟な対応が求められます。収益性の低い中小企業が存在する一因は、中小企業保護政策や低金利政策などによるものです。このため、最低賃金引き上げに対応できない企業を単純に倒産させるだけではなく、経済環境や企業の特性を考慮しながら支援策を検討する必要があります。
また、目標としての「1000円」は必要であるものの、さらなる目標設定は慎重に行うべきだと考えられます。最低賃金の設定や引き上げは、個別の変化を見ながら慎重に行う必要があります。
さらに、最低賃金の適用除外制度や産業別の最低賃金設定についても考慮すべきです。欧州では最低賃金の水準を平均賃金水準に対して設定することが一般的です。また、一部の労働集約的な産業には「別レーン」として最低賃金の適用を緩和することも重要です。ただし、適用除外や別レーンの規定は、労働者の保護を損なわないよう慎重に運用する必要があります。
政府の支援によって地域の産業の連携や生産性向上を図ることも重要です。地方の観光業や飲食業など、賃金引き上げが難しい産業でも、地域全体での取り組みやブランド育成によって生産性を向上させ、最低賃金の引き上げを実現することができます。
