- 他人への興味=「コピー能力」ではなく、「情報収集&自己評価」の基本機能だと心理学では考えられていること。
- 「羨ましい=向上心がある人」とは限らず、嫉妬には自己成長型と破壊型の2種類があると研究で区別されていること。
- 「自分の軸」がある人ほど、本当は学びを選び取って深めやすく、メンタルや幸福度も安定しやすいこと。
目次
はじめに
インフルエンサーの語る「俺理論」、勢いはあるけど、よく読むと「ん?それ本当?」となること多いですよね。今回の「他人に興味がある人=コピー能力が高い」「羨ましい人=生活改善を考えている」「自分の軸があると学びづらい」「他人に興味がありすぎると自分の機能をアンインストール」という話も、直感的にはそれっぽく見えますが、心理学や行動科学の知見と照らすとかなり怪しいところが多いです。本記事では、意外と知られていない研究やデータをもとに、この主張にツッコミを入れつつ、「じゃあ実際どうすればいいの?」まで整理していきます。
第1の反論:「他人に興味=コピー能力」って発想がそもそも狭すぎるw
インフルエンサーさんは「他人に興味がある=コピー能力として働く」と言っていますが、心理学ではそもそも「人は他人と比べる生き物」として説明されています。
有名な社会比較理論では、「自分の能力や意見を評価するために、他人との比較が必要になる」とされています。
つまり、
- 他人に興味を持つ
- 他人の行動や結果を見る
- 「自分は今どのあたりか?」「何が足りないか?」と判断する
という流れは、「コピー能力」どころか、人間の標準装備の自己評価システムです。
さらに、比較の目的は「丸パクり」ではなく、
- 自分の位置の確認(自己評価)
- どこを伸ばすか決める(自己改善)
- 自尊心を守る(自己防衛)
など、多面的です。
「他人に興味=コピー能力」という一言にまとめてしまうと、人が他人を見る本来の機能をかなり矮小化してしまっていると言えます。
他人への興味は「コピー能力」じゃなくて、「自分を理解するためのセンサー」のほうが近いです。丸パクり前提で話を始めてしまう時点で、理論としてだいぶ雑なのです。
第2の反論:「羨ましい=向上心」じゃない!嫉妬には善玉と悪玉がある
インフルエンサーさんは「他人を羨ましく感じる人は、生活改善を考え続けている」と言いますが、ここも研究的にはかなり危うい一般化です。
嫉妬に関する研究では、「ベニグ(建設的)な嫉妬」と「マリシャス(破壊的)な嫉妬」という2種類が区別されています。
ベニグな嫉妬
- 「あの人すごいな、自分も頑張ろう」というタイプ
- 自己成長や努力につながりやすい
マリシャスな嫉妬
- 「ムカつく、失敗しろ」「引きずり下ろしてやりたい」というタイプ
- 攻撃・陰口・足の引っ張り合いにつながりやすい
研究では、ベニグ嫉妬は勉強や仕事の成績向上と相関しますが、マリシャス嫉妬は攻撃性の高さや人間関係の悪化と関連することが示されています。
つまり、
「他人を羨ましいと感じる=生活改善を考えている良い人」
とは全然限らないのです。
「羨ましい」という同じ言葉でも、
- 自分を高めようとするタイプ
- 相手を下げようとするタイプ
に分かれるので、羨望=ポジティブ、みたいな一枚岩で語るのは危険です。
しかもSNS時代では、ひたすら「他人のリア充情報」を浴び続けることで、ベニグ嫉妬どころか、疲弊したり自己嫌悪が増えたりするケースも指摘されています。
「羨ましいから成長しているはず」とポジティブ変換するのは、しんどい人を切り捨てる論法になりかねません。
第3の反論:「自分の軸がある人ほど学びづらい」どころか、むしろ学びのフィルターが優秀説
主張の中で特に気になるのが、「自分の軸があって影響を受けづらい人は、他人から学ぶきっかけが少なくなる」という部分です。
モチベーション研究の代表格である自己決定理論(Self-Determination Theory)では、人が健全に成長するために必要な基本欲求として、
- 自律性(autonomy)
- 有能感(competence)
- 関係性(relatedness)
の3つを挙げています。
ここでいう「自律性」は、「自分で選び、自分で決めている感覚」に近く、いわゆる「自分の軸がある」状態にかなり重なります。
研究では、この自律性が高い人のほうが、
- 内発的なやる気が高い
- 学びを長く継続しやすい
- 心理的な幸福度が高い
という傾向が多く報告されています。
つまり、
自分の軸がある
⇒なんでもかんでも真似しない
⇒「本当に必要なものだけを選んで学びやすい」
という構図のほうが近いのです。
なんでも影響を受ける人は、一見フットワークが軽く見えますが、
- ノウハウを渡り歩くだけで定着しない
- 途中で投げ出しやすい
- 「誰かが正解をくれるはず」と依存しやすい
という落とし穴もあります。
自分の軸は「学びを妨げる壁」ではなく、「学びを選別するフィルター」と考えたほうが、研究とも現実とも整合的です。
第4の反論:「他人に興味ありすぎると自分をアンインストール」は逆で、むしろ「自分らしさ」が足りないと危ない
インフルエンサーさんは、「他人に興味がありすぎると自分の重要な機能をアンインストールしてしまう」と言います。
たしかに「全部真似しよう」「あの人みたいにならなきゃ」と極端になると、しんどくなるのはその通りです。
ただ、ここで大事なのは「興味の量」よりも、
- 自分の価値観
- 自分らしさ(オーセンティシティ)
- 自己理解の深さ
のほうです。
オーセンティシティ(authenticity:自分らしく生きること)に関するメタ分析やレビューでは、
- 自分らしさを感じられている人ほど、幸福度や人生満足度が高い
- 自分の価値観と行動がズレているほど、ストレスや抑うつが増えやすい
といった傾向が報告されています。
つまり、
他人への興味が多いこと
=自分をアンインストールしている
のではなく、
他人の価値観をそのまま採用し、
自分の価値観で「取捨選択」していない状態
が、いちばん危険なのです。
他人にめちゃくちゃ興味がある
でも「自分は何を大事にしたいのか?」という軸で選べている
なら、むしろ学びは加速します。
逆に、他人にはあまり興味がなくても、「なんとなく周りに合わせておけばいいや」と考えている人は、静かに自分をアンインストールしていきます。
問題は「興味の量」ではなく、「自分の軸で意味づけしているかどうか」です。
第5の反論:「バケツに穴あけない程度に」はふんわりしすぎw 線引きは『どれだけ自分で編集してるか』で決めるべき
最後に、「バケツに穴をあけない程度に」というまとめフレーズ。雰囲気は良いですが、実際の行動指針としてはかなり曖昧です。
学習研究、とくに社会的学習理論(Banduraの社会的学習理論)では、人が他人から学ぶときに必要なプロセスとして、
- 注意(attention)
- 保持(retention)
- 再生(reproduction)
- 動機づけ(motivation)
の4つが挙げられています。
ここから逆算すると、「バケツに穴をあけない」かどうかは、次のような問いのほうが実用的です。
- 他人の行動を見たあと、「これは自分に必要か?」と一度立ち止まってますか?
- 取り入れたものを、自分の言葉で説明できるレベルまで編集してますか?
- やってみてダメだったとき、「自分には合わなかった」と手放せていますか?
これができていれば、
- 他人にめちゃくちゃ興味がある
- 憧れも嫉妬もそこそこある
- でも、最終的には「自分仕様」に編集している
という健康的な状態になりやすいです。
逆に、
- とりあえず真似して、
- とりあえず続けて、
- しんどくても「成功者が言ってたから」とやめられない
のが、本当にバケツに穴があいている状態です。
「どれぐらい真似したか」ではなく、
「どれだけ自分で編集したか」で、自分のバケツの安全性をチェックしたほうが現実的です。
質疑応答コーナー
セイジ
てことは、他人を羨ましいって感じても、全部が悪い感情ってわけじゃないっすか??
プロ先生
そうですね。研究的にも、羨望には「自分も頑張ろう」と前向きなベニグ嫉妬と、「アイツ落ちろ」と思ってしまうマリシャス嫉妬があるとされています。前者は自分の行動につなげられればOKですが、後者が強くなっていると感じたら、一旦SNSから距離を取るなど「刺激源を減らす」工夫が大事になります。
セイジ
自分の軸があると、かえって学びやすいって話でしたけど、軸ってどうやって作るんすか??
プロ先生
いきなり「人生の軸」を決めようとすると重すぎるので、「これだけは譲りたくない価値観ベスト3」から始めると良いですよ。たとえば「健康は最優先」「家族との時間」「クリエイティブなこと」など。それを紙に書いておいて、「新しい情報やノウハウを見たとき、その3つと矛盾しないか?」を基準に選ぶ。これを続けると、自然と自分の軸が太くなっていきますね。
セイジ
SNSで他人見まくってメンタルやられる人って、具体的にどこを気をつければいいんすか??
プロ先生
「見る量」より「見たあと何をしているか」です。見たあとに、①自分の行動に落とし込む、②自分には合わないと判断して閉じる、のどちらかに早めに切り替えること。延々スクロールして比較だけしている時間がいちばん消耗します。また、「自分と状況が近い人(収入・環境・年齢など)」の発信を少なめにすると、嫉妬の刺激が弱まることも多いですよ。
まとめ
- 他人に興味を持つこと自体は、人間の標準機能であり「コピー能力」どころか自己理解のための重要なセンサーです。
- 羨望や他人からの影響は、使い方次第で成長にも破壊にも向かうため、「量」より「自分の軸で編集しているか」がカギになります。
- インフルエンサーの「俺理論」に振り回されるより、自分の価値観と科学的な知見をベースに、他人との距離感と学び方をデザインしていくのが一番の近道です。





























