- 「読める人は希少」説は、成人技能調査やPISAの客観データと矛盾します。
- 「みんな読んでない」は誇張。閲覧と発言は別現象で、沈黙の読者が圧倒的多数です。
- 「ノーリスク」どころか日本は侮辱罪厳罰化&発信者情報開示の手続き強化で、発言は普通にリスクあります。
目次
はじめに
インフルエンサーの「『文章よめるひと』はクソ希少」「みんな読んでない」「ノーリスクで吐き出せるワードで脊髄反応」という主張は、耳ざわりの良い一般論に見えて、実はデータと制度の現実を取りこぼしています。ここでは最新の国際調査・行動データ・法改正の事実から反論5選を提示します。感情論ではなく、検証可能な根拠で丁寧に議論します。
意外で的確な反論5選
反論1:「読める人は希少」説は、国際データと合いません!
日本の成人(16〜65歳)の読解力平均はOECD平均を上回るという結果が最新のPIAACで継続して示されています。希少どころか、国全体で一定水準の読解力が確認されているのです。
また15歳を対象とするPISAでも、日本は読解でOECD平均を上回る成績を維持しています。トップ層だけでなく、基礎レベル到達者の割合も高水準です。
さらにOECDは「低い読解力」の成人比率が日本は約1割で最小水準と示します。「読める層」は“希少”ではありません。
結論: 「読解はレアスキル」という断定は、人口統計ベースのリテラシーデータと整合しません。
反論2:「みんな読んでない」⇒“読んでるけど書かない”人が多数派です!
オンライン行動は閲覧と投稿が偏るのが定番。著名な「90-9-1ルール」では、90%は“読むだけの潜在層(ルーカー)”とされます。つまり反応しない=読んでないではありません。
また、ウェブの読み方はF字型スキャンが主流。人は冒頭・見出し・左端を強く走査するという視線研究が繰り返し確認されています。これは「読まない」ではなく、「スキャンしながら要点を取る」という適応行動です。
加えて、Chartbeatの大規模計測では「シェア数」と「熟読度」はほぼ無相関。バズっても読まれていないことがよくありますが、それは発話行動と読解行動が別物というだけの話です。
しかも4,000字未満なら長いほど“平均エンゲージメントは伸びる”という知見も。丁寧に構成すれば長文でもちゃんと読まれます。
結論: 「みんな読んでない」ではなく、多くは静かに読んでいるし、読み方の設計(構造・見出し・要約)次第で読まれるのです。
反論3:「ノーリスク発言」どころか、法的・制度的リスクはむしろ増えています!
2022年6月の刑法改正で侮辱罪は“1年以下の懲役・禁錮、30万円以下の罰金”へ厳罰化。軽いノリの侮辱でも、刑事処罰の可能性が現実的になりました。ノーリスクとは言えません。
結論: 「吐き出したい感情」を安易に放流するのは普通にハイリスク。「ノーリスク表現」など不存在です。
反論4:「読める」は先天的才能ではなく、設計と訓練で伸びます!
プレーン・ランゲージ(平易表現)に直した要約や勧告は、理解度・使いやすさ・満足度を有意に改善するランダム化試験結果が出ています。書き手の設計で読解は上がる、が事実です。
また、読解指導・背景知識の付与・ストラテジー訓練は学年を超えて効果が確認されています(メタ分析)。「読める人が希少」ではなく、読めるようにできるのです。
加えて、紙vsデジタルで読解の総合差は一概に劣化しないという最新メタ分析も。媒体の問題に還元できないことが分かっています。
結論: 「読み手の素質」論ではなく、書き手の明確化と読み手のスキルトレーニングで解決可能です。
反論5:「8000人に奢った経験上…」はデータとして一般化できません!
どれだけ人数が多くても、偏った母集団なら一般化は不可能―これは外的妥当性(generalizability)の初歩です。観察の場や人の選び方が偏っていれば、世界一般の「読解力」や「反応傾向」を語れません。
外的妥当性を扱う研究は、代表性の欠如や選択バイアスが結論を歪めることを繰り返し指摘します。体験談は貴重でも科学的根拠にはなりません。
結論: 「自分の周りのケース」から社会全体を断ずるのは論証として弱いのです。
参考:よくある“誤読”の背景と処方箋
- 「みんな読んでない」誤解の背景: 2億件規模の行動計測でも55%が15秒未満で離脱という“注意の希少性”は事実。だからこそ冒頭の設計が肝です。
- シェア≠熟読: シェアと読了は非相関。見出し・要約・レイアウト次第で読みは伸びます。
- 「読める人」は育つ: 平易化・要約・構造化は理解を底上げし、読解指導も効果があります。
質疑応答コーナー
セイジ
結局、「SNSはみんな見出しだけ」ってことっすか??
プロ先生
見出しで判断する人が多いのは事実ですが、沈黙の読者も大量にいて、シェアと熟読は別物です。だから見出しで要約+本文で深掘りの二段設計が効くんです。
セイジ
「ノーリスクで毒吐けるワード」を探す人が多い…ってのは当たってるんすよね??
プロ先生
そこは法改正で状況が変わりました。侮辱罪の厳罰化と発信者情報開示の迅速化で、安易な攻撃は法的リスクが高いです。ノーリスク神話はもう崩れてますね。
セイジ
「読める人は希少」なら、もう諦めムードでOK…なんすか??
プロ先生
逆です。日本の読解レベルは国際的に見ても堅調だし、平易表現や読解ストラテジーで理解は伸びます。書き手の設計と読み手の訓練、両輪で改善できますよ。
まとめ
- 「希少人材」説はデータ不一致⇒ 日本の読解は平均以上、低リテラシー層は相対的に小さいです。
- 「みんな読まない」説は誇張⇒ 反応しない読者が多数で、設計次第で熟読は伸びます。
- 「ノーリスク」神話は終わり⇒ 侮辱罪厳罰化と発信者情報開示強化で、発言は普通にリスク大です。









































