- 営業の「聞き上手ですね」は、ラポール形成の定番スキルで事実に基づく“観察+称賛”です。
- 「決めつけるな」は相手の意図を決めつけているブーメランになりやすいです。
- 受け止め→根拠→感謝→前進、の返し方が会話の成果(信頼・成約・好感)を最大化します。
目次
はじめに
営業の現場では、相手の話を引き出し要点を整える「アクティブリスニング」が基本技術です。相手の長所や行動を観察して褒めるのは、単なるお世辞ではなくラポール(信頼関係)を作る定番手順とされています。ところが「聞き上手ですね」と称賛された際に、「いや、おれはお前に聞きたいことを…」と強く返すと、せっかくの好循環が止まり、会話の生産性が落ちます。本稿では、会話研究・心理学・ビジネス実務の知見に基づき、「それは違うよ」とスッと刺さる反論5選を示します。
反論5選
①「それ、事実ベースの評価ですよね?⇒ 実は“営業のKPI”でもある」
「聞き上手ですね」は“お世辞”でなく、観察に基づく評価である可能性が高いです。営業研修では、相手の要件を明確化し、質問のピントを合わせる行動を“可視的スキル”として指導します。つまり「聞き上手」は、観察事実に基づくプロの確認です。ここで「いや、俺は~」と否定すると、相手は「観察が否定された」と受け取り、以降の深掘りが難しくなります。意外に効くのは、称賛の“根拠”を引き出す返しです。
【例】「ありがとうございます。どの質問が刺さってました?」⇒ 相手の評価軸が得られ、以降の会話が“共同編集”に進みますw
②「“決めつけないで”はブーメラン!?⇒ 自分も相手の意図を決めつけてません?」
「お世辞だろ」という決めつけは、マインドリーディング(相手の内心を断定する認知の歪み)にあたります。相手は単に“感謝+次に進める潤滑油”として言っているかもしれません。ここでの意外な反論は、相互仮説化です。
【例】「ありがとう。もし社交辞令じゃなく事実なら、僕のどの点が話しやすさに繋がったか教えてください」
これで相手は“褒め⇒根拠”の筋道を提示せざるを得ず、会話が客観化します。ブーメランが静かに収まりますw
③「質問の矢印、逆向きかも⇒『俺が聞きたいから聞いてる』は“自己中心トーク”化のサイン」
「俺が聞きたいから聞いてる」は、主語が常に自分で矢印が内向きです。対話の生産性は“相互の目的適合”で最大化します。相手視点の価値(要件・制約・KPI)を捉え、質問を共有ゴールに沿わせると、会話は早く深く進みます。
【例】「僕が知りたいのはAですが、御社の判断材料Bに足りますか?」
これでグライスの関係の公理に沿い、相手も“仕事が進む質問”だと認識します。「自分が聞きたいから」は、場面次第で独演化しやすいので要注意ですw
④「最強の返しは“受け止め→具体→感謝→前進”テンプレ」
心理学・交渉学で有効なのはアサーティブ・コミュニケーションの基本手順です。称賛をいったん受け、根拠を具体化し、感謝して、次のアクションに繋げます。
【型】
①受け止め:「そう言ってもらえて嬉しいです」
②具体化:「特にどの質問が役立ちました?」
③感謝:「フィードバック助かります」
④前進:「では次は◯◯の条件を詰めませんか?」
これで好意の返報性が働き、会話が前に進みやすいです。テンプレは地味に見えて、成果に直結する“現場最強の反論”ですw
⑤「炎上コスパ最悪w⇒ ネガティブ返しは“長く残る”し“伝播する”」
否定的な返しはネガティビティ・バイアスで過大に記憶され、第三者へも拡散されやすい傾向があります。インフルエンサーならなおさら、“人前での言葉”は資産です。
【例】
×「勝手に決めつけるな」⇒ 印象の急降下・再接続コスト増
○「ありがたいです。次は◯◯の前提すり合わせさせてください」⇒ 具体進展+信頼蓄積
短期のカタルシスより、長期のブランド価値を優先するのが賢い反論です。結果的に“効く”のはこちらw
使えるスクリプト集(秒で回収できる!)
- 称賛の受け止め:「ありがとうございます。どの点がそう見えました?」
- 前提確認:「僕の質問の粒度はちょうどいいですか?足りなければ深掘ります」
- 共同編集:「この話、御社の意思決定の何に効きます?」
- 否定の代替:「社交辞令でも実利があるなら歓迎です。次は◯◯を詰めましょう」
- 締めの前進:「ここまでの要点を30秒で要約して、次アクション決めませんか?」
チェックリスト(自分が“決めつけ”てないか)
- 相手の発言動機を「きっとお世辞」と断定してないか?
- 「俺が知りたいから」は共有ゴールになっているか?
- 称賛を受け止め→具体化→感謝→前進に変換できたか?
- 短期の気持ちよさより長期の評判・成果を優先しているか?
質疑応答コーナー
セイジ
お世辞って見抜いた方が賢いんすよね??
プロ先生
見抜けるに越したことはありませんが、まずは受け止めて前進に変える方が“賢い”です。お世辞か本心かを詮索しても成果は生まれません。根拠を尋ね、会話を共同作業にすれば、どちらでも利得が出ます。
セイジ
『俺はお前に聞きたいことを聞いてる』は強気でカッコいいっすよね??
プロ先生
場面によりますが、主語が自分に寄り過ぎると“独演化”しがちです。強い姿勢は相互の合意ゴールに紐づけたとき最も効果的です。「私が聞きたいAは、あなたの意思決定Bに役立ちますか?」と変換すると、強気が成果に直結します。
セイジ
褒められたら『その具体』を聞き返すのが最適解なんすか??
プロ先生
はい、最短で学習と前進が起きます。具体を得れば強みの再現性が上がりますし、相手は「聞かれて良かった」と感じます。ついでに「では次は◯◯を詰めましょう」とアクション接続まで運べば完璧です。
小さなケーススタディ(短編)
営業A「話の要約が上手ですね」
インフルB「いや、俺はお前に聞きたいことを聞いてるだけ」
— ここで会話は硬直。Aは観察を否定されたと受け取り、深掘りの手控えモードへ。
改善版:
B「ありがとう。どの要約が役立ちました?」→ A「論点を3つに整理したところです」→ B「では次は3つ目の予算根拠を詰めませんか?」
結果:称賛は“実務の根拠”に変換され、意思決定が1ステップ進む。評判も維持。コスパ最高w
今日から使える“一言スイッチ”
- 「ありがとうございます。今の一言、次の論点にどう効きます?」
- 「僕の質問の粒度、細かすぎません?調整します」
- 「称賛の根拠を教えてください。再現します」
- 「この話、意思決定の何を前に進めます?」
まとめ
- 称賛は“事実の観察+関係の潤滑”で、雑なお世辞と区別して扱うと得します。
- 「決めつけるな」は自分にも跳ね返るので、仮説化→具体の確認で客観化します。
- 受け止め→具体→感謝→前進の型が、信頼・成果・評判の三拍子を最大化します。