- 「ヨイショ=全部ダメ」は誤り。誠実で具体的な称賛は信頼と成果を上げるという知見がある。
- 「優秀ほど嫌う」みたいな一括りは個人差を無視した過度の一般化。
- 高成果の現場は称賛(承認)+建設的フィードバックの両輪で回る。
目次
はじめに
某インフルエンサー氏の「優秀なほどヨイショを嫌う」「褒められるのは疲れる」「欲しいのは一緒にいて疲れない人」という主張は、いかにも耳ざわりが良いキャッチーな言い回しですが、実証研究や現場の運用知見と整合しない部分が目立ちます。ここでは感情論ではなく、組織心理・コミュニケーション研究・実務のベストプラクティスに照らして、「それは違う」と言えるポイントを反論5選として整理します。
【反論1】「ヨイショ」は質がすべて!⇒ “お世辞”は嫌われるが“具体的な称賛”は評価と成果を上げるw
「ヨイショ=ムダでウザい」という紋切り型は誤りです。人は承認欲求で動くのではなく、努力や行動が正しく認識され、次の行動に結びつく“正のフィードバック”で学習します。とくに具体・行動・プロセスに紐づく称賛(例:「仕様を最初に分解した段取りが神。だから後半のバグ潰しが速かった」)は、相手の自律性と有能感を高め、再現性のある行動を強化します。逆に、空疎でコストのかからないお世辞(例:「さすが!」「天才!」)は確かに価値が低い。嫌われるのは“中身のないお世辞”であって、称賛そのものではない—ここを混同すると議論がズレます。
- ポイント:称賛は具体・観察可能・再現可能に。
- ミニフレーズ:「何が良かったか」「なぜ効いたか」「次もそこを頼む」。
【反論2】「優秀ほど嫌う」は過度の一般化!⇒ 性格特性も文脈も違うっすw
「優秀=称賛嫌い」という図式は個人差を無視しています。ビッグファイブ(外向性・協調性・開放性など)や動機づけ傾向(達成・権力・親和)によって、承認の受け取りやすさは人それぞれ。また、称賛の“送り方”と“タイミング”がズレると、どんな相手でもノイズになります。リーダーやハイパフォーマーほど、チームの学習速度を上げる称賛設計(良い行動を名指しで共有)を活用します。「嫌う」かどうかは「優秀さ」ではなく称賛の質×関係性×文脈で決まるのです。
- ポイント:人をひと括りにせず、相手の受け取り方の傾向を学ぶ。
- ミニフレーズ:「どのフィードバックが一番役立つ?」
【反論3】「分かりきったこと言うな」こそ非科学w ⇒ 共有現実は摩擦コストを下げる!
「分かりきったこと」は、本当に“共有”されている保証がないのが現場です。研究では、相手も同じ理解だと思い込みやすいバイアスが繰り返し確認されています。成功要因を言語化し直すこと(例:「今回は“仕様の先出し”が勝因」)は、チームの共通参照点=再現装置を作る行為。これは単なるヨイショではなく、学習の高速道路です。「明文化された当たり前」を積むほど、無駄な衝突とすれ違いが減ります。
- ポイント:当たり前の言語化=ナレッジ化。沈黙は共有ではない。
- ミニフレーズ:「今回の勝ちパターンを一言で言うと?」
【反論4】「一緒にいて疲れない人>称賛」ではない!⇒ 高成果は“快適さ×張り”の最適点で決まる!
疲れない関係が良いのは当然ですが、快適さだけでは学習が止まるのも事実。ハイパフォーマンス環境は、心理的安全性(質問・助け合い・失敗共有ができる)と同時に、明確な基準・挑戦的目標・頻度高めのフィードバックが走ります。ここに具体称賛が入ると、安全に挑戦する余地が広がります。「疲れない」だけを最適化すると、フィードバック回避に陥りやすい。必要なのは、安心して高い基準に向かえるテンションです。
- ポイント:「居心地の良さ」だけでなく基準の明確さと称賛の具体を。
- ミニフレーズ:「今の基準を越えた“何”が起きた?」
【反論5】正しい称賛は“操作”ではなく“透明化”w ⇒ 信頼は「事実→理由→影響」で積み上がる!
「ヨイショ=操作」という見方も短絡的です。事実(観察)→理由(価値基準)→影響(成果・学習)の順でフィードバックすれば、相手の意思決定を尊重した“透明化”になります。たとえば、「レビューで“先に懸念を書いた上で代替案を提示”してたよね(事実)。うちのチームは“代替案までがレビュー”って基準だから(理由)、議論が速くて助かった(影響)」。これを繰り返すと、望ましい行動の再現性が高まり、関係の信用残高も増えます。“こび”ではなく学習の言語化です。
- ポイント:FBI(Fact→Because→Impact)で称賛を構造化。
- ミニフレーズ:「今の動き、何が効いたか言語化しておくね。」
質疑応答コーナー
セイジ
「やっぱ“褒めすぎるとナメられる”ってあるんすか??」
プロ先生
あります。でも問題は量より質と設計っす。行動に紐づく具体称賛は基準の明確化になり、むしろ信頼が積み上がります。逆に、曖昧なお世辞や“上だけを見る”称賛はナメられやすい。誰のどの行動が基準に合致したかを言語化しましょう。
セイジ
「“疲れない人が一番”って、やっぱ正義っすよね??」
プロ先生
正義“だけ”にすると成長が止まる危険があるっす。心理的安全性は土台ですが、その上に挑戦的目標と迅速なフィードバックが必要。心地よさと張りの最適点を探すのがプロの設計です。
セイジ
「“分かりきったこと言うな”って空気、どう崩すんすか??」
プロ先生
共有言語のフレームを作るっす。「今日の勝ち要因を一言で」「再現するときの合言葉は?」など、1分で言える型をチームに置く。ルール化すれば“言った者負け”の空気は消えます。
まとめ
- 「ヨイショ=害」ではない。害があるのは空疎なお世辞で、具体的・誠実な称賛は信頼と成果を上げます。
- 「優秀ほど嫌う」は過度の一般化。鍵は称賛の質×関係性×文脈です。
- 疲れないだけでは伸びない。心理的安全性+高基準+具体称賛の設計で学習が加速します。











































