- 仕事の成果は「能力×妥当な評価×学習文化」で伸び、“挨拶が9割”はエビデンスと矛盾します。
- 「お酌の強要」はハラスメントや生産性低下のリスクが高く、法と国際的知見が警鐘を鳴らします。
- 出世・機会の獲得は弱いつながり&異質な橋渡しが鍵。内輪の根回し一本足打法は逆効果になり得ます。
目次
はじめに
「8000人に奢った経験から、成功は“挨拶とお酌”が9割!」――派手な体験談は耳に残りますが、私たちが頼るべきは再現性のあるデータです。本稿では、人事心理学・組織研究・日本のハラスメント法制・国際機関の分析を横断し、主張のどこがズレているかを「意外で的確」かつ実務目線で解説します。礼儀は大切です。しかし“礼儀=成果の9割”ではありません。では、何が効くのか? 5つの反論で整理します。
反論1:「挨拶が9割」説は、採用・評価の実証と噛み合わないw
100年研究の総括によれば、仕事のパフォーマンスを最もよく予測するのは「一般的認知能力(GMA)」「仕事サンプル」「構造化面接」など。たとえば古典的メタ分析では、GMA+仕事サンプルで平均妥当性約0.63、GMA+インテグリティで約0.65という高水準が示され、単なる「感じの良さ」よりも能力×職務適合が効きます。
近年の更新研究でも、GMAや標準化された選考手法が強い予測力を持つ傾向は堅持。「挨拶=9割」は効果量の桁が違います。
要するに: 礼儀は潤滑油。でもエンジンは能力と適材適所。9割どころか「主因の座」はエビデンス的に別にあります。
反論2:「お酌を拒むと問題が生じる」⇒法・コンプラ的にリスク高め!
日本ではパワハラ防止が法的義務。大企業は2020年6月、中小企業も2022年4月から措置義務が適用されました。優越関係を背景とする過度な言動はアウト。「飲酒の強要」は典型例として各種資料でも問題視されています。
行政・実務情報では、上司が部下へ飲酒を迫る行為はハラスメントの具体事例として度々整理。職場での「お酌」の圧力は、企業側のリスクにも直結します。
さらに国際機関(OECD)は、有害な飲酒が労働生産性とGDPを下げると報告。「飲ませて繋がる」文化は、組織の健康度と逆相関になり得ます。
要するに: 「お酌が万能鍵」どころか、法務・労務の地雷。拒まれて「問題になる」ほうが組織の体制不全ですw
反論3:「根回しがすべて」⇒沈黙圧力が意思決定を鈍らせる
組織行動研究では、心理的安全性の高いチームほど学習・改善が進むことが繰り返し示されています。声を上げても罰されない風土が成果の土台。
Googleの大規模プロジェクトでも、チーム有効性の中核は心理的安全性という知見。過度の「空気読み」より、率直な提案・指摘がパフォーマンスに寄与します。
しかも“声”は評価や地位向上にも連動し得るとのメタ分析・実証が蓄積。「根回し=すべて」で口をつぐませる文化は、学習・スピード・品質を蝕みます。
要するに: 必要なのは「静かな同調」ではなく、安心して言える場。根回しは道具のひとつに過ぎません。
反論4:昇進・チャンスは「弱いつながり」と“橋渡し”が運んでくる
就職・転機の情報は、しばしば親密な仲より“弱いつながり”から来る――これは社会学の古典的発見。内輪の儀礼では届かない機会を外部ネットワークが運んできます。
さらにグループ間をつなぐ“構造的穴”のブローカーは、新規アイデアや有利な情報の入手で優位に立つ――経営・組織の多分野で観察。内輪の礼儀過多=情報の冗長化になりがちです。
要するに: 「身内に深く」だけでは足りません。“外へ広く・異質へ橋渡し”がキャリアと成果の推進剤です。
反論5:「挨拶しない奴は能力10倍あっても無理」⇒性格と成果の関係はそんなに単純じゃない
性格とリーダーシップの関連は確かにありますが、外向性が常に最適とは限りません。従業員が自律的・プロアクティブな場面では、内向的リーダーのほうが成果が高いという実務研究も。
メタ分析では、外向性は指標の一部として安定的相関を持つものの、それだけで「10倍の能力」を覆すほどではありません。能力・誠実性・職務適合などの複合が効きます。
さらに職場での無礼さ(インシビリティ)はパフォーマンスや努力を下げる。“元気な挨拶”より“互いの礼節”のほうが影響が大きい、という示唆も現場データに表れます。
要するに: 「挨拶=万能」「挨拶しない=終わり」は極論。礼節は大事、でも成果は多変量ですw
質疑応答コーナー
セイジ
心理的安全性って、ただ優しくするって話っすか??
プロ先生
いいえ、率直な指摘を歓迎し、報復しないという運用ルールのことです。優しさだけでなく、反論やミス報告を促す設計が肝心です。研究や実務ガイドでも、学習と成果の土台として確認されています。
セイジ
飲み会断ると損じゃないっすか??
プロ先生
断ってもOKです。強要はハラスメントになり得ますし、組織側にも防止義務があります。関係構築は1on1や業務での信頼貯金で十分取り返せますよ。
セイジ
弱いつながりって、SNSのフォロワー増やせばいいだけなんすか??
プロ先生
数より質と橋渡しです。異なる集団とつながることで新情報と機会が入ります。月1のショート面談や勉強会参加など、実接点の更新が効きますね。
まとめ
- 「挨拶9割」ではなく、「能力×適合×学習文化」が王道(選考・評価の実証が裏付け)。
- お酌の強要は法的・生産性的リスク。関係構築は1on1等の健全手段で十分。
- 機会は“弱いつながり”と発言文化から生まれる。内輪の根回し一辺倒は逆効果。












































