- インフルエンサーの「実家細い=陰口/実家太い=正面から悪口」発言は、個人の体験談であって統計的事実そのものではないです。
- ただし「立場の弱さが陰口などの間接的攻撃につながりやすい」「余裕がある側ほど自己主張が強くなりやすい」という研究結果と一部かみ合う点もあります。
- とはいえ社会階層と性格は一対一対応ではなく、データもかなりバラバラなので、「実家で人を決めつけない」のが一番安全です。
目次
■はじめに
インフルエンサーの男性が「8000人に奢った経験から、実家が細い人は陰でコソコソ悪口を言いがち、実家が太い人は正面から悪口を言いがち」と語った一件は、多くの人の実感に刺さったようで、ネットでも大きな話題になりました。 「わかるw」と感じる人もいれば、「そんな単純じゃないでしょ」とモヤモヤする人もいると思います。
この記事では、この発言そのものを持ち上げたり叩いたりするのではなく、心理学や社会学の研究でわかっている「お金や社会階層と、人の攻撃スタイル・振る舞いの関係」をベースに、内容を的確に整理します。
1:これは「事実」じゃなくて“体感ベースの仮説”ですw
インフルエンサーの発言は、「8000人に奢った自分の経験から見えたパターン」です。これはかなりレアな体験で、聞いていて面白いエピソードではありますが、科学的にランダムサンプリングしたデータではありません。 心理学や社会科学では、こうした個人の体験談は「仮説の種」にはなりますが、それだけで「事実」とは言えません。
さらに、社会階層と行動の研究では、上の階層と下の階層での行動差について、研究ごとに結果がバラついていることが報告されています。ある研究では「上の階層ほど自己中心的・非倫理的な行動が増える」と示される一方で、別の大規模研究では「単純な上下関係では説明できない」「差が出ない」という結果もあります。
つまり、この発言を「100%真実」と扱うのは危険ですが、「一人の観察者が見た面白い仮説」として受け取りつつ、研究の知見と照らし合わせて考えるのがちょうど良い距離感です。
2:「陰口=間接的な攻撃」は、弱い立場ほど選びやすい戦略です
まず、「裏でコソコソ陰口を言う」という行動は、心理学では「間接的攻撃」「関係性攻撃」と呼ばれます。これは、殴る・怒鳴るのような露骨な攻撃ではなく、「噂話」「悪い評判を流す」「仲間外れにする」など、人間関係を通じて相手を傷つけるスタイルの攻撃です。
研究によると、間接的攻撃は「正面からぶつかると不利な立場」の人ほど選びやすい戦略だとされています。例えば、権力や発言力の弱い人は、目の前でケンカをすると自分が損をするリスクが高いため、裏側で評判を操作する方向に行きやすい、という説明です。
ここから考えると、「実家細い=経済的に弱い・立場が弱いことが多い」→「真正面からぶつかりにくく、陰口という形で不満を出しやすい」という流れは、完全に間違いとも言えないロジックです。
ただし、これはあくまで“平均的な傾向”の話であり、「実家が細い=必ず陰口」という意味ではない点は強調しておきたいところです。
3:「正面から悪口」は、余裕や自信・特権意識とセットになりやすいです
次に、「実家太い奴は正面から面と向かって悪口を言いがち」という部分を見ていきます。 社会階層と行動の研究では、「上の社会階層になるほど、自分の利益や欲求を優先しやすい」「他人に遠慮せず行動しやすい」という傾向を示す研究があります。
また、上位階層の人の方が、交通ルールを破ったり、交渉でズルをしたりといった“非倫理的な行動”を取りやすいと報告した有名な研究もあります。
もちろん、こうした結果にも反論や再検証があり、「必ずしも上の階層=悪」というわけではありませんが、「自分の欲求を通す力と自信があると、ストレートに不満や攻撃を表現しやすい」ことはかなり一貫して指摘されています。
この観点から見ると、「実家が太い=経済的な余裕+社会的な自信がある場合が多い」→「嫌いな相手には堂々と辛辣なことを言う」というパターンが見えやすくなるのは、ある意味で自然です。
ただし、ここでも「実家太い人=全員がズケズケ物を言う人」なわけではなく、「余裕や特権意識が強い一部の人ほど、その傾向が“目につきやすい”」と考えるのが妥当です。
4:とはいえ“実家で性格が決まる”ほど世界は単純じゃないですw
面白いのは、社会階層と行動の研究が、実はかなり「結果バラバラ」である点です。 ・「上の階層ほど自己中心的・非倫理的」という結果の研究もあれば ・「いや、クラス差とモラルははっきり結びつかない」という実験やメタ分析もあります。
さらに、「下の階層の方が、周囲への注意や共感が強くて、助け合い行動が増える」というレビュー論文もあり、簡単に“お金持ち=悪い、貧しい人=いい人”と割り切れないことも指摘されています。
つまり、研究全体を眺めると、
・お金や社会階層は、人の行動の「傾向」を少し動かす
・でも、それ以上に「個人の価値観・性格・環境」のバラつきが大きい
というのが現状の理解に近いです。
インフルエンサーのように大量の人に会っていると、「実家細いのに堂々としてる人」「実家太いのにめちゃくちゃ気を遣う人」は印象に残りにくく、「ステレオタイプ通りの人」だけが記憶に残っていきます。
その結果、「実家細い=陰口」「実家太い=正面から悪口」という「わかりやすいパターン」が、頭の中で強調されてしまう可能性も十分にあります。
要約5:実家マウントに巻き込まれないための“距離の取り方”5つ
最後に、読者側としてどう距離を取るかを、実践的に5つにまとめます。
①「実家」で人をラベリングしない 実家の太さ細さは、その人がコントロールできない属性です。そこで人を判断し始めると、自分も「実家タグ」で見られる世界になってしまいます。
②「攻撃スタイル」は立場と性格の掛け算で見る 陰口タイプか正面タイプかは、「立場の強さ・弱さ」だけでなく、性格(内向・外向)、育ったコミュニケーション文化などの影響も大きいです。相手の背景を一言ラベルに押し込まないことが、自分のメンタルを守る近道でもあります。
③「攻撃してくる人」より「距離をどう取るか」にエネルギーを使う 陰口でも正面からの悪口でも、こちらがコントロールできるのは「相手の性格」ではなく「自分の距離の取り方」です。関係を薄くしたり、仕事だけの付き合いにしたり、ブロックしたり、「攻撃を浴び続けない環境づくり」に集中した方が建設的です。
④「自分がどっち側に寄りがちか」を自覚しておく 自分が弱い立場のときほど陰口に流れやすいか、逆に強い立場に立つとマウントを取りがちか──どちらのクセも、少し自覚しておくとブレーキがかかりやすくなります。「あ、今ちょっと陰口モード入ってるな」と気づくだけでも行動は変わります。
⑤「面白い持論」と「事実ベース」を頭の中で分けて楽しむ インフルエンサーの名言系ツイートは、エンタメとしての側面も大きいです。「わかるw」と感じるのは全然アリですが、そのまま採用して人をジャッジし始めると、対人関係のトラブルの種にもなります。面白ネタと現実の判断基準は、意識的に分けておくと安心です。
■質疑応答コーナー
セイジ
「実家細い人って、やっぱり陰で悪口言いがちって思っちゃうんすけど…これ、偏見なんすか??」
プロ先生
「“傾向としてそう見える場面もある”けど、“その人全部がそうだ”と決めつけると偏見になりますね。立場が弱いと正面からは言いづらくて、裏で不満が出やすいこと自体は研究でも指摘されています。ただし、それが“実家の太さだけ”で決まるわけではなくて、性格や職場文化などもセットで効いていると考えた方が現実に近いです。」
セイジ
「じゃあ、実家太い人がズバズバ物言いするのも、“金持ちだから性格悪い”ってより、“自信あるからストレートになる”って感じなんすかね??」
プロ先生
「そうですね。“性格悪い”と一言で片づけるより、“失うものが少ない側・守られている側ほど、ストレートに自己主張しやすい”という見方の方が説明力があります。お金や社会階層が高いと、ある種の『守られ感』や『自分は大丈夫』という感覚が生まれやすく、その分、遠慮なく言いやすい状況になりがちです。」
セイジ
「実際の人付き合いでは、“実家太いか細いか”とか気にしない方がいいってことなんすか??」
プロ先生
「そうです。日常レベルでは、“この人はどういう時にどんな攻撃スタイルを取りやすいか”に注目した方が、はるかに役に立ちます。陰口が多い人なら、あまり深く踏み込まない、情報を渡し過ぎない。正面からきつい人なら、必要な線を引いて距離を取る。実家の条件ではなく、『具体的な言動』を基準に自分の身の守り方を決めるのがおすすめです。」
■まとめ
- 「実家細い=陰口/実家太い=正面から悪口」という発言は、一人のインフルエンサーの体験談であって、そのまま“事実”と受け取るのは危険です。
- 研究的には「弱い立場ほど間接的攻撃を選びやすい」「余裕や特権意識が強いほどストレートな自己主張が出やすい」という傾向はあるものの、個人差や状況要因が非常に大きいです。
- 実家の太さ細さよりも、「その人が実際にどう振る舞っているか」を基準に距離感を決め、自分のメンタルと人間関係を守ることが一番大事です。







































