- 科学的標準は「心理+薬物+支援」の組み合わせであって、「依存の付け替え」ではありません。
- 「別の依存」を作る発想は“交差依存”のリスクを高め、根本解決を遅らせます。
- 運動は補助策として有望ですが、あくまで治療の“補助輪”です。「依存化」させるのは本末転倒。
目次
はじめに
とあるインフルエンサーが「アルコール依存をムリヤリなくすより、別の依存先を見つけろ。例えば車の運転スポーツにハマれ」と発言して話題になりました。ノリは勢いがあって面白いかもしれませんが、医療・公衆衛生の観点では危うい主張です。依存症は「気合い」や「代替の快感」で置き換える話ではなく、証拠に基づく治療と支援で回復を積み上げていく病気です。本記事では反論5選をテンポよく解説します。
反論①:「依存の付け替え」じゃなくて、標準治療は“組み合わせ療法”です!
世界的な標準は、行動療法(例:CBTや動機づけ面接)+医薬品(ナルトレキソン/アカンプロサート等)+自助・社会的支援の組み合わせ。米国のNIAAAや英国NICE、日本の保健当局もこうした体系を推奨しています。要するに「別の依存を作る」のではなく、飲酒衝動を科学的に下げ、生活を立て直すのが王道です。
- WHOの最新ガイドラインも、心理社会的介入と薬物療法の併用を支持。付け焼き刃の「代替依存」は推奨されていません。
- 国内で困ったら:自治体の相談窓口や依存症治療拠点、民間の自助グループにつながる導線が整っています。
反論②:「別の依存」を作る発想=交差依存の地雷ですw
「酒の代わりに別の強い刺激で満たそう」は、一見“前向き”に見えて実は危険。研究でも、行為嗜癖(ギャンブル・ゲーム・買い物・過度な運動など)は、報酬系・衝動制御・再発性といった点で物質依存と共通し、依存の“付け替え”が起こりうることが示されています。つまり「別の依存先にハマれ」は、問題の核心(コーピング不足・トリガー・環境)を素通りして、新しい問題を招く近道になりがち。
反論③:「運転スポーツ」は刺激強すぎ&コスト高でストレス増 ⇒ 再発リスクも!?
高速で競うモータースポーツはハイ・アラウザルな活動です。強刺激+高コスト+時間圧は、むしろ生活ストレスを増やしやすい組み合わせ。依存症の回復初期はストレス対処がカギで、ストレスは再発リスクと密接だと総説でも繰り返し指摘されています。ストレスを増幅しかねない選択を「依存先」に据えるロジックは、回復戦略としては合理的とは言えません。
- ※もちろん飲酒運転は論外・絶対禁止。安全第一の活動設計が前提です。
反論④:「運動」は“依存化”ではなく“処方”として――頻度・量・目的を設計するのが吉!
誤解しがちですが、運動は「依存化して逃げ込むもの」ではなく、治療を補強する“処方”です。近年のメタ分析では、有酸素・レジスタンス・ヨガ等の運動プログラムが、渇望や不安、体力・QOLを改善しうることが示されています。ただしこれは医療や心理支援の補助として設計された介入で、「別の依存」を作ることが目的ではありません。
- 例:週3回・中強度×30–45分など、現実的で継続可能な処方にすると効果が出やすい(研究介入の多くがこうした枠組み)。
反論⑤:「代替の快感」より“多職種+継続支援”が断然コスパ良し!
依存症治療はマラソンです。専門医・心理職・ソーシャルワーカー・自助グループが連携し、再発予防計画を回し続けるほうが、長期の費用対効果や生活再建の点で現実的。日本でも久里浜医療センターなどが多職種プログラムとアフターケアを提供しています。「映える趣味」探しは悪くないですが、治療の代用品にしてしまうのは順序が逆です。
質疑応答コーナー
セイジ
運動で気持ちアゲてれば酒のこと忘れられますよね??
プロ先生
一時的に気が紛れるのは事実ですが、運動は治療の補助であって土台には心理・薬物・支援が必要です。メタ分析でも運動は有効とされますが「依存化」させる意図ではなく、計画的な処方として使うのが安全ですよ。
セイジ
じゃあ「車の運転スポーツ」でスリル味わえば置き換え完了っすか??
プロ先生
スリルは強い刺激=ストレス反応にも直結します。依存症の再発はストレスで悪化しやすいので、高刺激・高コストな活動を“依存先”にするのは非推奨。まずはトリガー管理・睡眠・栄養・支援ネットワークを整えて、中等度の運動を処方的に入れるのが合理的です。
セイジ
医者とか行かなくても根性あればイケるっすよね!?
プロ先生
根性論だけでの寛解はレアです。エビデンスのある治療(CBT、動機づけ面接、ナルトレキソン/アカンプロサート等)と、自助や地域支援の併用が標準。国内の相談窓口や拠点病院もありますから、まずは専門家につながるのが最短ルートです。
まとめ
- 「代替の依存」ではなく、証拠に基づく治療の組み合わせが王道!
- 運動は“依存化”ではなく“処方”として安全に;交差依存の罠に注意!
- 高刺激・高コストでストレス増は逆効果w まず専門家と計画を!
参考(日本の窓口)
- 厚生労働省「アルコール健康障害対策」:相談機関・支援情報の入口に。
- 専門治療(例:久里浜医療センター):多職種プログラムとアフターケア。
※本記事は一般的情報です。緊急時や離脱症状が強い場合は救急・専門医へすぐ相談してください。






































