- 高齢出産は本人のワガママではなく、社会全体の晩婚・晩産化の結果です。
- 介護リスクは「早く産めば回避できる」ものではなく、誰にでも降りかかるライフイベントです。
- 一番きついのは産後の妻と要介護の祖母であり、夫が味方に回るかどうかで家庭の未来が決まります。
目次
はじめに
「6つ歳上の妻がすでに30代後半で高齢出産」「祖母が要介護になって、むしろ障害にしかなってない」「早めに産んでくれた方がラクだったのに」──こんな愚痴をこぼす新婚男性。正直、聞いていてモヤッとしますよね。もちろん、子育てと親の介護が重なる「ダブルケア」がハードなのは事実です。でも、そのしんどさを“年上妻と祖母のせい”にしてしまうのは、かなり自己中心的です。ここでは、データや社会状況も踏まえつつ、「それは違うでしょ!?」という厳しめ説教を5つにまとめてお届けします。
1:「その結婚と出産、決めたのはあなただけじゃないぞ!?」
まず最初に突っ込みたいのがココです。
- 「6つ上で30代後半の妻」と結婚したのは自分の意思
- その年齢で子どもを望んだのも、おそらく二人で話し合った結果
- なのに、いざ大変になったら「年上妻のせい」「高齢出産のせい」は筋違い
妻が年上であることも、30代後半での妊娠・出産も、付き合い始めの時点からわかっていた条件ですよね。「子どもが生まれるころには、妻の親は何歳くらいか」「介護が重なるリスクは?」と、事前に考える時間は十分にあったはずです。
さらに言えば、要介護状態になる年齢は人によってバラバラで、60代で要介護になる人もいれば、90代まで元気な人もいます。つまり、
- 「もっと早く産んでくれていれば、祖母も元気だったはず」⇒ただの“たられば”であり、責任転嫁です。
自分も「その条件込み」で結婚と出産を選んだ当事者なのだ、という自覚がないと、ずっと妻と妻の家族を恨む方向に行ってしまいがちです。
2:高齢出産は「わがまま」じゃなくて社会のトレンドです!
「高齢出産だから…」とまるで妻が勝手にリスクを上げたような言い方をする男性もいますが、事実ベースで見ると、もはや日本では「30代で産む」のが普通レベルになっています。
日本の第1子出産時の母の平均年齢は、1980年には26.4歳だったのが、2023年には31.0歳まで上昇しています。
また、厚生労働省の統計をもとにした分析では、
- 出生数全体は減少傾向
- 30~34歳の母親による出生数が最も多い
- 35~39歳、40代での出産も増加している
とされており、30代以上の母親の出産が当たり前になっていることがわかります。
つまり、
- 「30代後半で産んだから大変になった」「早く産んでくれてればラクだった」
という言い方は、社会全体の流れを完全に無視して、個人にだけ責任を押しつけている状態です。
仕事のキャリア形成、経済的な不安、パートナーとの出会うタイミングなどを考えれば、「20代前半で結婚・出産」が難しい人が増えているのは当然の流れ。晩婚・晩産化は、夫婦二人だけの問題というより、社会構造の結果なのです。
3:「祖母が障害になってる」とか言う前に、誰が一番しんどいか考えろ!
「本来は味方になるはずの祖母という存在が、出産が遅れたことで障害にすらなっている」
──この一文、かなりキツいです。
- 要介護になった祖母本人は、好きで寝たきり・要介護になったわけではない
- 出産が遅れたから“障害”になった、という言い方は、人の老いや病気を「迷惑な存在」と断定してしまっている
- そして実際、一番ハードモードなのは「産後の妻」+「介護される側の祖母」
介護実態のデータを見ると、同居の主な介護者は約4万6千人のうち、40代~70代がほとんどで、60~70代だけで約2万6千人、80歳以上の介護者も8千人を超えています。
さらに、主な介護者のうち睡眠が6時間未満という人は約2万人で、全体の4割以上にのぼります。
つまり、
- 介護は「誰か1人が全部背負う」と、心身ともにあっという間に限界に来る
- そこに産後の育児が重なれば、妻のメンタルも身体もギリギリ
そんな中で、「祖母が障害」「早く産んでくれたら…」といった言葉を夫から浴びせられたら、妻の心はボロボロになります。「味方になるはずの夫」が最大のメンタルダメージ源になってしまうのです。
一番つらいのは誰か?
それは、出産で身体を削られ、夜泣きに付き合いながら、親の介護問題まで背負っている妻。そして、自分の老いと要介護状態にどこかで罪悪感すら感じている祖母です。
そこに寄り添うはずの夫が、
「自分が一番かわいそう」モードになってしまったら、家庭は一気に崩れます。
4:ダブルケアは「誰かのせい」ではなく、社会的な課題です!
子育てと親の介護が同時に来る「ダブルケア」。これも決してレアケースではありません。
日本財団などが紹介する調査によると、子育てと親の介護を同時に担う「ダブルケアラー」は、2017年時点で少なくとも29万3,700人と推計され、その約9割が30~40代と言われています。
- 30~40代:仕事も子育ても一番忙しい世代
- そのタイミングで親の介護まで乗ってくる⇒そりゃあシンドい
- でも、それは「年上妻を選んだから罰ゲーム」ではなく、今の日本社会で普通に起こりうる現象
加えて、同居の主な介護者の年齢分布を見ても、多くが40代以降で、60~70代が最も多いことがわかります。
ここで大事なのは、
- 「誰のせいでこうなったか」を探すゲームをやめること
- 「この状況で、どう分担し、どこまで公的サービスに頼るか」を冷静に設計すること
「年上の妻を選んだ自分」「その年齢で産む決断をした夫婦」「長生きしてくれた親」──
全部ひっくるめて、「よくここまで来れたな」と見るくらいで、ちょうどいいのです。
5:過去を責めるより、今できる支援・制度を片っ端から調べろ!
「早く産んでくれていれば」「もっと若い祖母だったら楽だった」
──こうした“たられば”をいくら並べても、現実は1ミリもラクになりません。
やるべきは、「今ある現実を、どうマシにするか」です。
例えば、介護の場面ではこんな選択肢があります(地域によって名称は多少違います)。
- 介護保険サービス(デイサービス、ショートステイ、訪問介護など)のフル活用
- ケアマネジャーに「家族の負担」を正直に伝えて、プランを組み直してもらう
- 自治体の相談窓口や地域包括支援センターに「ダブルケアで限界」と相談する
- 仕事の調整(在宅勤務、時短勤務)を“夫側”からも提案・交渉する
- 兄弟姉妹・親戚と「どこまで何を分担するか」を再協議する
子育て面でも、
- ファミリーサポート、産後ケア事業、一時保育の活用
- 夫が夜間の授乳サポート(ミルク準備やおむつ替え)を積極的に担当する
- 家事代行サービスのスポット利用で、妻の身体を休ませる
など、「お金と時間で解決できる部分」が実は結構あります。
本当に自己中なのは、「高齢出産だからこうなった」と文句を言うだけで、自分の働き方も家事・育児・介護の分担も見直さない姿勢です。
「妻が早く産んでくれれば…」ではなく、「自分がもっとやれることは何か?」に頭を使うべきタイミングなのです。
質疑応答コーナー
セイジ
でも正直、20代前半で結婚して子どもって、今の感覚だとキツくないっすか??
プロ先生
キツいと感じるのは普通ですよ。実際、日本全体でも平均初婚年齢は夫31.1歳・妻29.7歳と上がっています。だから「若いうちに産むのが正義!」とも言い切れません。大事なのは、いつ産むかより「その時のパートナーとどう協力するか」です。
セイジ
高齢出産ってリスク高いって聞くんすけど…やっぱり「早く産んだ方が正解」ってことなんすか??
プロ先生
医学的には、35歳以上で妊娠・出産のリスクが上がるのは事実です。でも、それは「35歳過ぎたら産むな」という意味では全くありません。今は医療も発達していて、30代後半~40代で無事に出産する人もたくさんいますし、そもそも平均の初産年齢が31歳を超えている社会で、「早く産んだ人だけが正解」とは言えません。
セイジ
もし自分がその新婚男性の立場になったら、正直しんどくて文句言いたくなりそうなんすけど…どうやってグッと飲み込めばいいんすか??
プロ先生
文句を言いたくなる気持ち自体は人間なので普通です。ただ、「誰に向かって言うか」と「何に変えるか」が大事。たとえば、「週に1回は自分が子どもと祖母を見て、妻をまる1日オフにする」「介護サービスの回数を増やせないかケアマネに相談する」などですね。
まとめ
- 高齢出産は個人のわがままではなく、晩婚・晩産化という社会全体の流れの中にある選択です。
- 介護と子育てが重なる「ダブルケア」は誰のせいでもなく、責めるより分担と制度活用を考えるべき課題です。
- 「妻が早く産んでいれば…」ではなく、「夫として自分は何ができるか?」に頭と時間とお金を使うのが、真の家族思いです。







































